『三国志 Three Kingdoms』の考察 第74話「七歩の詩(しちほのし)」

亡き曹操(そうそう)の跡を継ぎ、魏王(ぎおう)となった曹丕(そうひ)。父の葬儀に参列せず、いまだ挨拶にも来ない弟の曹植(そうしょく)のもとへ許褚(きょちょ)らを遣わし、その罪を問う。

ようやく曹植が魏王府に姿を見せると、曹丕は華歆(かきん)の勧めに従い、7歩進む間に詩を作るという難題を吹っかける。

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第74話の展開とポイント

(01)許都(きょと) 宗廟(そうびょう)

献帝(けんてい)が先祖に曹操の死を報告し、その葬儀で叩頭(こうとう)の礼を執らされたことを詫びる。さらに、曹丕が詔(みことのり)を待たずに王位を継いだことに憤り、無念の思いを述べる。

(02)魏王府

曹丕が司馬懿(しばい)を呼び、いまだに姿を見せない曹彰(そうしょう)と曹植への対応を相談する。

そこへ、曹彰が10万の軍勢をひきいて弔問に来たとの知らせが届く。司馬懿は曹丕に命がけで説得にあたることを告げ、城外に駐留する曹彰のもとへ向かう。

(03)曹彰の軍営

司馬懿が曹彰を訪ねる。曹彰は許都へ攻め込む覚悟を示すが、最終的に司馬懿の説得を受け入れる。曹彰はひきいてきた10万の軍勢を曹丕に引き渡し、軍権も返上する。

ここで司馬懿が曹彰にこう言っていた。「先王のご遺志が天下に告げられれば、樊城(はんじょう)の曹仁(そうじん)、洛陽(らくよう)の徐晃(じょこう)、合肥(ごうひ)の張遼(ちょうりょう)、虎賁将軍(こほんしょうぐん)の許褚は大いに賛同しましょう……」。このドラマにおける、曹丕体制へ移行直後の宿将の配置設定を知るうえで参考になる。

(04)魏王府

曹丕のもとに司馬懿が戻り、今度は曹植への対応を話し合う。司馬懿は、曹彰が謝罪したことを曹植に伝え、拝謁に来させるよう進言する。

曹丕はこれまでの功績を評価し希望の官爵を与えようとするが、司馬懿は王室(魏王室)の主簿(しゅぼ)で十分だと答える。

曹丕は司馬懿に太尉(たいい)や相国(しょうこく)のポストを提示していた。

曹丕は司馬懿が官爵を求めないため、代わりに静姝(せいしゅ)という美女を贈る。

静姝は何進(かしん)の孫という設定。ドラマのオリジナルキャラだろう。

(05)司馬懿邸

司馬懿が司馬昭(しばしょう)に静姝を賜ったことを話し、曹丕が自分のことを父も同然だと言ったとも伝える。

(06)許宮(きょきゅう)

献帝が詔を下し、曹丕の魏王継承を正式に認める。

また「建安(けんあん)25年」を「延康(えんこう)元年」と改め、賈詡(かく)を太尉に、華歆を相国に、王朗(おうろう)を御史大夫(ぎょしたいふ)に、それぞれ任ずること。

亡き曹操に武王(ぶおう)の諡(おくりな)を追贈し、鄴郡(ぎょうぐん)の高陵(こうりょう)に葬り霊廟を建てたうえ、とこしえに祭祀を続けることも併せて認めた。

曹丕の冠の玉飾りは9旒(りゅう)だった。曹操の時に12旒の冕冠(べんかん)を許され、天子(てんし。献帝)と礼制が対等だと言っていたわりに、このあたりの扱いが徹底されていないのは残念。

献帝が退出したあと華歆が曹丕に言上し、曹操の葬儀に欠席したうえ、いまだに拝謁に来ない曹植の罪を問う。曹丕は許褚に、曹植を捕らえて刑に処すよう命ずる。

(07)臨淄侯府(りんしこうふ)

曹植が許褚の手で許都へ連行される。

(08)魏王府

卞氏(べんし)が曹丕を訪ね、曹植を殺したら自分も(夫である)曹操の後を追うと告げる。曹丕は卞氏に決して曹植を殺さないと約束する。

卞氏は曹操の正室。曹操との間に曹丕・曹彰・曹植・曹熊(そうゆう)の4人の息子を儲けた。

卞氏が帰ったあと華歆は曹丕に、それでも曹植は除かなければならないと告げ、翌日、宮殿で才能を試してみるよう進言する。

翌日、曹植が曹丕に拝謁し、曹操の葬儀を欠席したことへの裁きを乞う。

曹丕はこの場で7歩進む間に詩を作るよう命じ、「兄弟」という題を与える。

曹植は7歩で見事な詩を作り上げ、その内容に曹丕も思わず涙を流す。

曹丕は曹植の俸禄を500石(こく)減らし、安郷侯(あんきょうこう)に降格。3日以内に任地へ赴くよう命ずる。

司馬懿が曹丕に孫権(そんけん)への返礼品の目録を差し出し、確認を求める。

曹丕は「いささか見劣りする」と告げるが、司馬懿は、このほかに孫権に呉王(ごおう)の位を与えるよう進言。これは曹丕に漢帝(かんてい。献帝)の廃位を勧める、ということをも意味するものだった。

管理人「かぶらがわ」より

皇帝が亡くなったわけでもないのに改元とは……。この一事を見ても漢室(かんしつ)が滅亡寸前であることがうかがえます。

この第74話で採り上げられていた「七歩の詩」は正史『三国志』で触れられておらず、劉義慶(りゅうぎけい)の『世説新語(せせつしんご)』を出典としたものです。

とはいえ、『三国志演義』の中では私も好きなエピソードのひとつ。ドラマでも外せないと思います。

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