『三国志 Three Kingdoms』の考察 全95話の考察を終えて

『三国志 Three Kingdoms』の全95話の考察を終えての総括です。よくできていたと感じた話をまとめてみました。

各話の考察については「全95話の考察(タイトル一覧)」からご覧ください。

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第1部:群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)

(第02話)「曹操、亡命す(そうそう、ぼうめいす)」
曹操と陳宮(ちんきゅう)。成皐県(せいこうけん)で勘違いし、呂伯奢(りょはくしゃ)の家の者を皆殺しにしてしまった際の「やっちまった感」がよく出ていました。

(第15話)「轅門に戟を射る(えんもんにげきをいる)」
やはり、呂布(りょふ)が方天画戟(ほうてんがげき)の枝つばを射抜くシーンは痛快。

(第18話)「呂布の死(りょふのし)」
タイトルにある呂布ではなく、陳宮の死のほうが心に響きました。このドラマでは、陳宮の描写に一貫した深みが感じられたのがよかったと思います。

第2部:中原逐鹿(ちゅうげんちくろく)

(第20話)「劉備、命を受ける(りゅうび、めいをうける)」
劉備が厠(かわや)で献帝(けんてい)に拝謁していたのが衝撃的。ちなみに厠は古代からよく密談に使われたそうです。曹操と劉備が、梅を愛でながら酒を酌み交わした際のやり取りも見ごたえあり。

(第28話)「田豊、死諫す(でんぽう、しかんす)」
官渡(かんと)の戦いそのものより、適切な進言をしても報われない田豊が哀れ。

(第29話)「夜、烏巣を襲う(よる、うそうをおそう)」
許攸(きょゆう)の言葉。「曹操にそれほどの力はない。凡人の中にある恐れこそがそなたの強さを助長している。強い曹孟徳(そうもうとく。孟徳は曹操のあざな)像を完成させているのだ」は名言でした。

第3部:赤壁大戦(せきへきたいせん)

(第33話)「三顧の礼(さんこのれい)」
隆中(りゅうちゅう)や臥竜岡(がりょうこう)の景色が素晴らしかった。張飛(ちょうひ)が諸葛亮(しょかつりょう)の庵(いおり)に火を付けてましたけど――。

(第36話)「長坂坡の戦い(ちょうはんはのたたかい)」
趙雲(ちょううん)の見せ場。やりすぎに見えるほどの奮闘ぶり。ただ、張飛の一喝で曹操の部将(兵士かも)のひとりが血を吐いて落馬したのは、映像化してみると微妙だったような……。

第4部:荊州争奪(けいしゅうそうだつ)

(第43話)「司馬懿、出仕す(しばい、しゅっしす)」
曹操が赤壁(せきへき)の敗戦を振り返り、軍略と情勢分析を語っていた場で思いっきり寝ていた司馬懿が目を引きました。

(第44話)「曹操、華北に帰る(そうそう、かほくにかえる)」
(第45話)「曹沖の死(そうちゅうのし)」
史実においても若くして亡くなった曹沖ですが、そのキャラクターは非常に魅力的。吉川『三国志』や『三国志演義』では使われていない彼を、ドラマでは使おうという姿勢を評価したいです。

(第48話)「魯粛の斡旋(ろしゅくのあっせん)」
チョイ役ながら邢道栄(けいどうえい)がよかったと思います。人というのは、追い詰められると彼のような態度を取りがちですよね。

(第53話)「孫権、兵符を返す(そんけん、へいふをかえす)」
なぜ周瑜(しゅうゆ)は荊州(けいしゅう)の攻略を急ごうとするのか? 魯粛との対話が見どころでした。

(第57話)「周瑜の死(しゅうゆのし)」
若くして逝ってしまう周瑜。この人は散り際にも華がある。

第5部:奸雄終命(かんゆうしゅうめい)

(第61話)「曹丕に罪を問う(そうひにつみをとう)」
黄奎(こうけい)と親しくしていたことを最後まで認めなかった曹丕。曹操との息詰まるやり取りがよかったと思います。

(第66話)「落鳳坡(らくほうは)」
龐統(ほうとう)が劉備の蜀(しょく)取りの名分作りのために散った、という設定が興味深かったです。

(第68話)「単刀会(たんとうかい)」
魯粛の態度に荊州3郡の返還を認めた関羽(かんう)。漢室(かんしつ)への忠義を貫く荀彧(じゅんいく)が痛々しい。

(第69話)「曹丕、乱を平らぐ(そうひ、らんをたいらぐ)」
曹操から空っぽの箱を贈られて真意を悟り、悲壮な死を遂げる荀彧。ふたりの決別には運命的なものを感じます。曹丕のほうも苦労の末の後継者指名でした。

(第72話)「麦城に敗走す(ばくじょうにはいそうす)」
劉備の義弟であり、軍の主柱でもあった関羽の死。荊州を託された後の振る舞いは、良くも悪くも関羽らしいもの。超人的でありながら、完全無欠ではなかったところが関羽の魅力なのだと思います。

(第73話)「曹操薨去(そうそうこうきょ)」
吉川『三国志』や『三国志演義』を読めば蜀寄りになるのは仕方がない。しかし、正史『三国志』が魏(ぎ)寄りであることを考慮しても、やはり最もスケールが大きいのは曹操ではないでしょうか?

第6部:天下三分(てんかさんぶん)

(第74話)「七歩の詩(しちほのし)」
たとえ正史『三国志』で触れられていないエピソードでも、これは外せません。兄弟間の複雑な感情は、時代を経ても変わらないものなのか……。

(第77話)「張飛、殺害される(ちょうひ、さつがいされる)」
あっけない張飛の死。ここに至った過程がいかにも彼らしいものでした。このあっけなさが逆にリアルというか……。こういう最期もあるなと考えさせられました。

(第82話)「陸遜、連営を焼く(りくそん、れんえいをやく)」
東征を強行したものの、夷陵(いりょう)で陸遜に大敗する劉備。らしいと言えばそれまでですが、魏との国力差を考えれば致命的な失敗。

(第83話)「白帝城に孤を託す(はくていじょうにこをたくす)」
曹操に続き劉備も逝く。跡継ぎの劉禅(りゅうぜん)は凡庸な人物でしたが、自分の凡庸さをよく知っていたようにも思えます。馬謖(ばしょく)が呉(ご)へ遣わされたという設定には不満が残りました。

第7部:危急存亡(ききゅうそんぼう)

(第93話)「上方谷の火、消える(じょうほうこくのひ、きえる)」
『三国志演義』の創作とはいえ、このドラマでも雨のシーンは印象に残りました。魏と蜀の争いに、ひとつの決着がついたことを暗示しているかのようでした。

(第94話)「星落ち、五丈原に逝く(ほしおち、ごじょうげんにゆく)」
諸葛亮が劉備、そして劉禅への忠義を尽くしたという評価に異議はありません。ただ、劉備から後事を託された時点で諸葛亮は打って出ることを宿命づけられていました。もしまったく制約のない状況だったなら、彼はどのような方針を採っていたのでしょうか?

まとめのまとめ

全95話の中にはイマイチだったと感じた話もありました。ですが、不満を感じた部分については各話の考察でも触れましたので、ここで改めて挙げるのはやめておきます。

どの話がということではないのですが、このドラマでは「いま何年なのか?」に触れないことも多かったため、時間の経過がわかりにくいところがありました。

せめて各話の冒頭シーンでは、場所とともに何年のことなのかも明示すべきだったと思います(これは中国の制作サイドの問題ではないのかもしれませんけど……)。人物の紹介にも似たような問題があると感じました。

逆に当時の官位や制度などは、字幕で詳しく補足するとかえって話がわかりにくくなる気もします。とはいえこれも工夫次第でしょう。

韓国の歴史ドラマもたまに見るのですが、内容はともかく、上で挙げたような点についての説明はわかりやすいです。日本語版の制作スタンスの違いなのでしょうか?

それでも、本線を破綻させずに全95話の長編を完結させたことは評価できますし、何より(少なくとも私は)飽きずに全話を観たという事実が、このドラマのデキを物語っています。

まぁ三国志好きからみての感想なので、どうしても甘めになりますね……。今後もいろいろ作ってほしいと思います。

個人的には『三国志演義』べったりの作品ばかりではなく、正史『三国志』を重視した作品も観てみたい。より筋の通った話が期待でき、新たな発見もあるはず。

製品版について

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『三国志 Three Kingdoms 後篇 DVD-BOX』
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『三国志 Three Kingdoms 第6部:周瑜絶命』
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DVD版とBlu-ray(ブルーレイ)版では各部の編成が異なるようです(全95話なのは同じ)。

上記の製品に加え、講談社より2015/10/1から2016/12/08にかけて『三国志 DVD&データファイル』(全32巻)が刊行されました。こちらにつきましては「当サイトの紹介記事」をご覧ください。

管理人「かぶらがわ」より

各話の考察はBSフジで2012/4/2から2012/8/13にかけて全話放送された、『三国志 Three Kingdoms』を視聴してのものです。

製品版(DVDおよびBlu-ray)の内容は反映していないため、これらをご覧になった方々には違和感があるかもしれません。

このサイトのほかのコンテンツで用いた人物の読み方などと、ドラマでの読み方が異なる場合はドラマのものを優先して表記しました。

ドラマで描かれたすべての場面を漏らさずに採り上げたわけではありません。とはいえ、できる限り丁寧にまとめるようには心がけました。

今後、字幕版やノーカット版が放送されるようなことがあれば、この考察も加筆・修正する可能性があります。

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今日も三国志日和 – 史実と創作からみる三国志の世界 –

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  1. とおりすがり より:

    一番カッコイイ役も、一番カッコイイ役者も、司馬懿仲達だな。

    • かぶらがわ より:

      とおりすがりさん、コメントありがとうございます。

      司馬懿と諸葛亮だと圧倒的に諸葛亮ファンが多いのだと思いますが、結局、最後に勝ったのは司馬懿のほうなんですよね。

      それに司馬懿がいなかったら、諸葛亮の人気もこれほど後世まで続かなかったかもしれません。

  2. 匿名 より:

    只今、隔週発売のDVDを見ている真っ最中であります。
    毎号心待ちにしている状態です。今回は張飛死すの巻でした。
    ここまで観て日本ほど蜀に偏らず、私が疎いエピソードも入っており非常に満足しております。私的にはもう少し諸葛亮にスーパーマンであって欲しかった。
    ちょっと人間感が強いですよね。

    勢い余って蜀古戦場跡ツアーに申し込むも、参加者が私と息子だけという悲惨な状態で催行されませんでした(笑)
    来年は行くぞ!

    • かぶらがわ より:

      匿名さん、コメントありがとうございます。

      初めこのDVDの企画を聞いたとき、それほど需要があるのだろうか、とか、最終巻まできっちり発売できるのだろうか? などと心配していましたが、どうやら大丈夫みたいですね。

      いただいたコメントの後半には笑ってしまいましたが、今の中国には行きづらいなと感じつつも、私もいつか成都ぐらいは訪ねてみたいなと思っています。

      まぁ、これはもう少し日中関係が改善してから、ということになりそうですけど……。

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