吉川英治(よしかわ・えいじ)先生の小説『三国志』(全311話)を熟読して、展開やポイント、感想などをまとめたものです。主要テキストは新潮文庫版。表紙の画像は、株式会社新潮社さまの承諾を得たうえで掲載しています。
吉川『三国志』の考察 篇外余録(3)「魏から――晋まで(ぎから――しんまで)」
視点を魏(ぎ)に転じ、もうひとつの落日賦(らくじつふ)を描いた篇外余録の3話目。 蜀(しょく)の諸葛亮(しょかつりょう)のたび重なる侵攻を防ぎきった魏の曹叡(そうえい)だったが、3代目のお約束にはまってしまう……。 篇外余録(3)の全文とポ...
吉川『三国志』の考察 篇外余録(2)「後蜀三十年(ごしょくさんじゅうねん)」
諸葛亮(しょかつりょう)亡き後、蜀(しょく)が急速にしぼんでいくさまを描いた篇外余録の2話目。 蜀にとって諸葛亮がどのような存在だったのか、痛いほど伝わってくる……。 篇外余録(2)の全文とポイント (01)孔明(こうめい。諸葛亮のあざな)...
吉川『三国志』の考察 篇外余録(1)「諸葛菜(しょかつさい)」
吉川『三国志』の著者である吉川英治(よしかわ・えいじ)先生の三国志観から、諸葛菜(しょかつさい)と呼ばれ、現代でも食べられているという蕪(かぶ。蔓菁〈まんせい〉ともある)の逸話までが語られた篇外余録の1話目。 吉川先生が、諸葛亮(しょかつり...
吉川『三国志』の考察 全311話の考察を終えて
吉川『三国志』の全311話の考察を終えての総括です。特に印象に残った話をまとめてみました。 ★各話の考察については「全311話の考察(タイトル一覧)」からご覧ください。 (一)桃園(とうえん)の巻 (第001話)「黄巾賊(こうきんぞく)」 ...
吉川『三国志』の考察 第311話「松に古今の色無し(まつにここんのいろなし)」
生前の諸葛亮(しょかつりょう)が案じた通り、ほどなく魏延(ぎえん)が反乱を起こす。南鄭(なんてい)に入った楊儀(ようぎ)と姜維(きょうい)は、諸葛亮から託された計略に従い、あえて城外へ出たうえ、魏延にあることをしてみせるよう言う。 魏延が言...
吉川『三国志』の考察 第310話「死せる孔明、生ける仲達を走らす(しせるこうめい、いけるちゅうたつをはしらす)」
渭水(いすい)の本営で天文を観ていた司馬懿(しばい)は、諸葛亮(しょかつりょう)の死を確信する。そこで夏侯覇(かこうは)に偵察を命じ、蜀軍(しょくぐん)が密かに引き揚げの準備をしていると聞くや、全軍で総攻撃をかけた。 司馬懿は息もつかずに急...
吉川『三国志』の考察 第309話「秋風五丈原(しゅうふうごじょうげん)」
諸葛亮(しょかつりょう)の禱(いの)りは、あと一夜というところで成就しなかった。だが、攻め寄せた魏軍(ぎぐん)にも取り乱すことなく、魏延(ぎえん)に命じて追い払わせる。 諸葛亮は、自ら著した24編の書物を姜維(きょうい)に託し、楊儀(ようぎ...
吉川『三国志』の考察 第308話「銀河の禱り(ぎんがのいのり)」
魏(ぎ)は渭水(いすい)に、蜀(しょく)は五丈原(ごじょうげん)に、それぞれ陣して、なおもにらみ合いを続けていた。 ここしばらく、諸葛亮(しょかつりょう)は体調を崩す日が増えていたが、ある夜、天を仰ぎ見て、己の命数を悟る。それでも姜維(きょ...
吉川『三国志』の考察 第307話「女衣巾幗(にょいきんかく)」
葫蘆谷(ころこく)で司馬懿(しばい)父子を討ち漏らしたものの、渭水(いすい)における大勝利に蜀軍(しょくぐん)は沸いていた。 その後、魏蜀(ぎしょく)両陣営ともに不穏な空気が流れだす。魏は司馬懿の消極的な姿勢への不満が、蜀は魏延(ぎえん)の...
吉川『三国志』の考察 第306話「水火(すいか)」
諸葛亮(しょかつりょう)が葫蘆谷(ころこく)に大規模な拠点を築いていると伝わると、ようやく司馬懿(しばい)も動きを見せた。魏軍(ぎぐん)は部隊を繰り出すたびに勝利を重ね、蜀軍(しょくぐん)の力を侮るようになる。 そのうち司馬懿は祁山(きざん...
吉川『三国志』の考察 第305話「七盞燈(しちさんとう)」
蜀(しょく)に情報は届いていないものの、魏(ぎ)の側面を突く形で出兵した呉軍(ごぐん)が引き揚げたことにより、祁山(きざん)の諸葛亮(しょかつりょう)は、渭水(いすい)の司馬懿(しばい)を自力で討ち破るしかなくなった。 しかし、司馬懿は一向...
吉川『三国志』の考察 第304話「豆を蒔く(まめをまく)」
蜀(しょく)の要請を受けて魏(ぎ)へ出兵した呉軍(ごぐん)だったが、巣湖(そうこ)の諸葛瑾(しょかつきん)が満寵(まんちょう)らに敗れ、出鼻をくじかれる。 だが、呉の総帥たる陸遜(りくそん)は、魏の国力に驚きながらも冷静に状況を見極め、本営...
吉川『三国志』の考察 第303話「ネジ(ねじ)」
渭水(いすい)の司馬懿(しばい)は、蜀軍(しょくぐん)が木牛(もくぎゅう)と流馬(りゅうば)という新たな輸送車を使い始めたと聞き、張虎(ちょうこ)と楽綝(がくりん)に命じて4、5輛(りょう)奪ってこさせる。 それらを解体して図面に写し取らせ...
吉川『三国志』の考察 第302話「木牛流馬(もくぎゅうりゅうば)」
これまでの北伐において、いつも諸葛亮(しょかつりょう)を悩ませたのは兵糧の確保だった。 そこで今回は葫蘆谷(ころこく)に極秘の作業場を設け、「木牛(もくぎゅう)」や「流馬(りゅうば)」と呼ぶ運搬車を製作。この車が使われ始めると、剣閣(けんか...
吉川『三国志』の考察 第301話「具眼の士(ぐがんのし)」
劉禅(りゅうぜん)の許しを得て、むたび北伐に出る諸葛亮(しょかつりょう)。しかし北原(ほくげん)を攻めると見せかけ、渭水(いすい)の魏(ぎ)の本営を狙った策は、司馬懿(しばい)に看破されていた。 このため蜀軍(しょくぐん)は、北原と渭水の双...
吉川『三国志』の考察 第300話「木門道(もくもんどう)」
鹵城(ろじょう)にいた諸葛亮(しょかつりょう)は、永安城(えいあんじょう)の李厳(りげん)から急報を受け、にわかに総退却を命ずる。 司馬懿(しばい)は諸葛亮の計略を警戒したため、あえて追撃の速度を緩めていたが、再三の請いを容れ、張郃(ちょう...
吉川『三国志』の考察 第299話「北斗七星旗(ほくとしちせいき)」
4輛(りょう)の同じ四輪車を用いた諸葛亮(しょかつりょう)の巧妙な計に、司馬懿(しばい)ひきいる魏軍(ぎぐん)は大混乱を起こす。 やがて司馬懿は、捕らえた蜀兵(しょくへい)から真相を聞きだすが、かえって諸葛亮の知謀に恐れを抱く。 第299話...
吉川『三国志』の考察 第298話「麦青む(むぎあおむ)」
魏(ぎ)に降った苟安(こうあん)の流言が効き、前線から成都(せいと)に呼び戻された諸葛亮(しょかつりょう)。彼は劉禅(りゅうぜん)の誤解を解くと、すぐに漢中(かんちゅう)へ引き返す。 建興(けんこう)9(231)年2月、諸葛亮は鹵城(ろじょ...
吉川『三国志』の考察 第297話「竈(かまど)」
渭水(いすい)で司馬懿(しばい)に勝利した諸葛亮(しょかつりょう)が、祁山(きざん)の本営に戻ると、兵糧運搬にあたる苟安(こうあん)が、予定より10日余りも遅れて到着した。 楊儀(ようぎ)の口添えもあり、苟安は死罪を許され、鞭(むち)打ちの...
吉川『三国志』の考察 第296話「八陣展開(はちじんてんかい)」
魏(ぎ)の太和(たいわ)4(230)年8月、渭水(いすい)を挟み、司馬懿(しばい)ひきいる魏軍(ぎぐん)と諸葛亮(しょかつりょう)ひきいる蜀軍(しょくぐん)が射戦を交えた後、ふたりは陣頭で相まみえ、互いに陣法をもって優劣を競うことにする。 ...