『三国志 Three Kingdoms』の考察 第93話「上方谷の火、消える(じょうほうこくのひ、きえる)」

魏(ぎ)の司馬懿(しばい)は蜀(しょく)の諸葛亮(しょかつりょう)の計にかかり、上方谷(じょうほうこく)へ誘い込まれる。

谷に入った司馬懿は諸葛亮の意図に気づいたものの、にわかに各所で爆発が起こり、辺り一面は火の海に。司馬懿は自決を覚悟するまで追い込まれたが、そのとき――。

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第93話の展開とポイント

(01)キ山(きざん。ネ+阝。祁山) 諸葛亮の軍営

諸葛亮が王平(おうへい)に1千騎を預け、長安(ちょうあん)から隴西(ろうせい)を通って司馬懿の本営へ運ばれてくる、30万(30万石〈ごく〉?)の兵糧を奪うよう命ずる。

王平は諸葛亮から一計を授かり、魏軍の装束を着けて出発した。

(02)敵地に進入した王平

王平が魏の輜重(しちょう)部隊を呼び止める。そして兵糧を調べると称し、配下の兵士たちに木牛(もくぎゅう)の舌を操作させた。

王平が立ち去ると、魏の兵糧官は兵士たちに先へ進むよう命ずるが、木牛が動かなくなり立ち往生してしまう。そこへ王平が戻ってきて輜重部隊を襲う。

魏兵が司馬懿の本営まで助けを呼びに行くと、王平は再び配下の兵士たちに木牛の舌を操作させ、兵糧を運び去る。

(03)駆けつけた司馬懿

兵糧官から急を聞いた司馬懿が兵をひきいて駆けつける。ところが蜀軍は、兵糧を積んだ木牛とともに跡形もなく消えていた。

司馬懿はその場で兵糧官を処刑。司馬懿は諸葛亮の計だと悟るが、南へ向かう山道がいくつもあるため追撃を断念した。

(04)諸葛亮の軍営

王平が奪った兵糧とともに戻る。諸葛亮は王平の働きを高く評価した。

(05)隴西 司馬懿の軍営

司馬懿のもとに勅使が着き、曹叡(そうえい)の詔(みことのり)を伝える。

この中で司馬懿は、蜀軍の北進以来の連敗や大量の兵糧を奪われたことを問責され、大将軍(だいしょうぐん)の職を解かれる。ただ大都督(だいととく)については変更がなく、このまま指揮を執ることが許された。

また曹叡は、ひと月のうちに勝利できなければ、司馬懿に追加の処罰を行うことを予告した。

(06)上方谷

司馬懿自ら出向き、諸葛亮が奪った兵糧を置いているという上方谷の様子をうかがう。

(07)司馬懿の軍営

曹叡から言い渡されたひと月の期日が迫り、諸将は司馬懿に決断を促す。

ここで郭淮(かくわい)が司馬懿に、「知らせでは夏侯淵(かこうえん)の子・夏侯覇(かこうは。夏侯霸)が驃騎大将軍(ひょうきたいしょうぐん)に任じられた。心配です。期日を過ぎれば、この者が大都督に……」と言っていた。このドラマではもう見慣れた驃騎大将軍。驃騎将軍に大が付くのか、という点は謎として残った。

驃騎大将軍は范曄(はんよう)の『後漢書(ごかんじょ)』に数多くの用例があり、将軍号として通用することがわかった。(2016/2/18追記)

またここで郭淮が司馬懿に、夏侯覇は傲慢不遜で無学無才だとも言っていた。夏侯覇は後に蜀に降る人物だが、『三国志演義』、正史『三国志』とも無能な人物とはしていない。ドラマのオリジナル設定だろうか?

司馬懿は郭淮と孫礼(そんれい)に10万の精鋭を預け、キ山にある諸葛亮の本営を攻めるよう命ずる。そのうえで諸将に、自ら兵をひきいて兵糧を奪い返すと告げる。

(08)諸葛亮の軍営

楊儀(ようぎ)が諸葛亮に、10万を超える魏の大軍が迫っていることを知らせる。諸葛亮は司馬懿の旗が見えているとも聞くが、その狙いは上方谷であると見抜く。

諸葛亮は姜維(きょうい)と楊儀に、今から上方谷の魏延(ぎえん)と王平に用心するよう伝えても手遅れだと話すが、一方で王平に策を授けてあることも明かす。

(09)司馬懿の軍営

司馬昭(しばしょう)が司馬懿に、キ山を激しく攻めていることを報告。しかし、司馬懿は魏延が上方谷から動いていないと聞くと、郭淮にキ山を攻める兵を増やすよう伝えさせる。

ほどなく司馬懿のもとに、魏延がキ山の救援に向かい、上方谷には王平と数千の兵が残っているとの知らせが届く。

(10)諸葛亮の軍営

姜維が諸葛亮に魏軍の攻撃が激しいと報告。東の砦は二度も破られたが、何とか奪い返したと。ただ南の状況は危うく、まもなく陥落しそうだとも。

姜維は司馬懿が攻撃の指揮を執っていると考えるが、諸葛亮は司馬懿は上方谷にいると言い、敵の撃退に専念するよう伝える。

(11)司馬懿の軍営

司馬懿が司馬昭とともに兵をひきいて上方谷へ向かう。

(12)諸葛亮の軍営

楊儀が諸葛亮に、南の砦が破られたうえ東と北も苦戦、夜明けまでに本営も陥落しそうだと伝える。

楊儀は陳倉(ちんそう)へ移るよう勧めるが、諸葛亮は聞き入れず徹底抗戦を命ずる。

(13)救援の機をうかがう魏延

魏延のもとに、東と西が破られ、本営も包囲されて激戦になっているとの知らせが届く。魏延はすぐには救援に向かわず、突入のタイミングを計る。

続いて魏延のもとに、キ山の本営が破られたとの知らせも届く。ここで魏延は突撃を命ずる。

(14)諸葛亮の軍営

姜維が諸葛亮に、魏延の部隊の突入で魏軍が崩れていると知らせる。

諸葛亮は姜維に、廖化(りょうか)の軍営に行き、廖化に兵馬をひきいて上方谷へ向かい、王平と呼応し、司馬懿が谷に侵入したら谷口を封鎖するよう伝えさせる。

廖化は久々の登場。

諸葛亮は楊儀と数百の衛兵を連れ、上方谷へ向かう。

(15)司馬懿の軍営

司馬昭が司馬懿に、谷口の砦を破り、王平は数千の兵と山中へ逃げたことを伝える。

司馬昭は蜀軍が上方谷の砦を捨てたと言い、兵糧を奪い返すよう進言。しかし司馬懿は許さず、ひとまず司馬昭に谷口を守るよう命じ、改めてキ山の様子を探らせる。

(16)上方谷

諸葛亮が到着し、山上から谷の様子をうかがう。

近くまで来ていた司馬懿のもとに、魏延がキ山に現れて郭淮と交戦し、こう着状態になっているとの知らせが届く。

ここで司馬懿が全軍に、谷へ入って兵糧を奪い返し、砦は焼き尽くすよう命ずる。

司馬懿は砦の中に兵糧が置かれていることを確認。ところが、置かれていた米を口にしてみると、油が染み込んでいることに気づく。

司馬懿は諸葛亮の計だと悟り、ただちに撤退を命ずる。そのとき爆発が起き、あちこちから火の手が上がり始める。

司馬懿は逃げられないと覚悟。兵士たちに投降を促し、自身は自決しようとする。そこへにわかに雨が降りだし、辺りの火を消す。

管理人「かぶらがわ」より

諸葛亮の計にかかり、上方谷に閉じ込められる司馬懿。しかし、そのとき天意とも言える雨が降りだし、父子ともども命拾い。

これは『三国志演義』(第103回)に基づく話ですが、正史『三国志』には見えませんから創作なのでしょうね。

このドラマでは前後のエピソードをかなり動かしており、『三国志演義』とも違った形に仕上がっていました。

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監督:ガオ・シーシー 脚本:チュウ・スージン 国内販売元:エスピーオー
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。

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