胡質(こしつ) ※あざなは文徳(ぶんとく)、魏(ぎ)の陽陵亭貞侯(ようりょうていていこう)

【姓名】 胡質(こしつ) 【あざな】 文徳(ぶんとく)

【原籍】 楚国(そこく)寿春県(じゅしゅんけん)

【生没】 ?~250年(?歳)

【吉川】 登場せず。
【演義】 第096回で初登場。
【正史】 登場人物。『魏書(ぎしょ)・胡質伝』あり。

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清潔な生き方を貫いた良臣、陽陵亭貞侯(ようりょうていていこう)

父は胡敏(こびん)だが、母は不詳。息子の胡威(こい)は跡継ぎで、胡羆(こひ)も同じく息子。

胡質は、若くして蔣済(しょうせい)や朱績(しゅせき)とともに長江(ちょうこう)や淮水(わいすい)一帯で名を知られ、州郡に仕えた。

蔣済が揚州別駕(ようしゅうべつが)となり、使者として曹操(そうそう)に目通りした際、胡敏の子孫について尋ねられる。

蔣済が胡質のことを話すと、曹操はすぐに召し寄せて頓丘県令(とんきゅうけんれい)に任じた。

県民の郭政(かくせい)が従妹と密通し、その夫の程他(ていた)を殺害する事件が起こる。この際、郡吏の馮諒(ふうりょう)も投獄されて証言を行った。

郭政と従妹は鞭(むち)打ちに耐え、事実を隠して抵抗。一方の馮諒は痛みに耐えきれず、偽りの自白をしたため郭政らの罪をかぶることになった。

だが胡質が着任すると、彼らの様子から何かを察し、詳しく調べ直して真実を明らかにした。

やがて胡質は中央へ入って丞相東曹議令史(じょうしょうとうそうぎれいし)となったが、揚州から要請があったため治中(ちちゅう)に転ずる。

曹操が丞相を務めていた期間は208~220年。

将軍の張遼(ちょうりょう)は、配下の護軍(ごぐん)の武周(ぶしゅう)と仲たがいしていた。

そこで張遼は揚州刺史(ようしゅうしし)の温恢(おんかい)に、胡質を配下にもらい受けたいと願い出る。

胡質が病気を理由に断ると、張遼がやってきて責めた。しかし、胡質が武周の人柄をたたえると、張遼も心を動かされて仲直りした。

後に胡質は再び曹操に召され、丞相属となる。

曹丕(そうひ)の黄初(こうしょ)年間(220~226年)、胡質は吏部郎(りぶろう)に移り、常山太守(じょうざんたいしゅ)を経て東莞太守(とうかんたいしゅ)に転じた。

士人の盧顕(ろけん)が殺害される事件が起き、若い妻が残された。胡質は盧顕に仇敵(きゅうてき)がいなかったことから、妻に原因があるのではないかと考える。

胡質が近所の若者ら全員に会ってみると、書吏の李若(りじゃく)が動揺の色を見せた。そこで李若を徹底的に調べたところ、たちまち自白が得られて事件は解決した。

胡質は軍功に対する賞賜をみな分け与えてしまい、家に入れることがない。郡に9年在任したが、官民は安心して暮らせるようになり、将兵もよく従ったという。

胡質は荊州刺史(けいしゅうしし)に昇進。振威将軍(しんいしょうぐん)の官位を加えられ、関内侯(かんだいこう)に封ぜられた。

241年、呉(ご)の朱然(しゅぜん)が樊城(はんじょう)を包囲したとき、胡質は軽装の軍をひきいて救援に駆けつけようとする。

魏の論者は、敵の勢いが盛んなところへ近づくべきでないと言った。

それでも胡質は樊城へ行って朱然の包囲陣に臨み、城内の者を落ち着かせた。

胡質は征東将軍(せいとうしょうぐん)・仮節(かせつ)・都督青徐諸軍事(ととくせいじょしょぐんじ)に昇進する。

胡質が東方で農業生産を拡大し、穀物の蓄積に努めた結果、2年分の蓄えができた。さらに彼は東征台を設置して、田作と守備を両立させた。

また、諸郡に水路を通じて舟航の便を図り、敵への備えを厳重にしたため、海辺の地域では事件が起こらなくなった。

胡質は沈着で内省を忘れず、自分の考え方で他人を縛ることがなかったので、それぞれの任地で慕われたという。

250年、胡質は死去したが、家に余財はなく、下賜された衣服と書物を納めた箱があるだけだった。

軍師がこの様子を報告すると、胡質に陽陵亭侯の爵位が追贈され、封邑(ほうゆう)100戸を賜る。そして貞侯と諡(おくりな)され、息子の胡威が跡を継いだ。

管理人「かぶらがわ」より

本伝によると、254年、胡質は曹芳の詔(みことのり)により清潔な品行を褒賞され、遺族に銭と穀物が下賜されたということでした。

また『三国志』(魏書・徐邈伝〈じょばくでん〉)によると、このとき徐邈・胡質・田豫(でんよ)の家に、それぞれ穀物2千斛(ごく)と銭30万が下賜されています。

彼らに共通するのは賞賜をみな将兵に分け与えてしまったことで、これはなかなかまねできないかも。ちょっとだけ家に入れるのもダメなのでしょうね……。

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