【姓名】 唐咨(とうし) 【あざな】 ?
【原籍】 利城郡(りじょうぐん)?
【生没】 ?~?年(?歳)
【吉川】 登場せず。
【演義】 第108回で初登場。
【正史】 登場人物。『魏書(ぎしょ)・諸葛誕伝(しょかつたんでん)』に付された「唐咨伝」あり。
魏から逃げたものの、不思議な巡り合わせで戻ることに
父母ともに不詳。
曹丕(そうひ)の黄初(こうしょ)年間(220~226年)、利城郡で反乱が起こり、太守(たいしゅ)の徐箕(じょき)が殺害される。このとき唐咨は(反乱軍の)主導者に推された。
魏の討伐軍に撃破されると唐咨は船で海へ逃げ、そのまま呉(ご)に身を寄せる。
★『三国志』(魏書・文帝紀〈ぶんていぎ〉)には225年6月のこととして以下のような記事が見える。「魏の利成郡(りせいぐん)の兵士である蔡方(さいほう)らが郡を挙げて背き、利成太守の徐質(じょしつ)を殺害した。曹丕は屯騎校尉(とんきこうい)の任福(じんふく)と歩兵校尉(ほへいこうい)の段昭(だんしょう)を遣わし、青州刺史(せいしゅうしし。王淩〈おうりょう〉か?)と協力して討伐にあたらせた。反乱に加わった者のうち、脅迫されたり無理やり引き込まれた者、反乱の発生により亡命した者については全員の罪を許した」
郡名が利城と利成とあるうえ、太守の名も徐箕と徐質とあり、どちらも異なっている。ちなみに、利城郡はほかの記事にも登場するが、利成郡は上で挙げた記事にしか見えないようだ。225年が黄初年間に含まれることを考えても、両者は同じ反乱を指していると考えるのが自然だと思う。利成は利城とすればいいのだろうが、太守の名は徐箕でいいのかよくわからなかった。なお、魏の曹芳(そうほう)配下の討蜀護軍(とうしょくごぐん)として、別に徐質という人物がいるので注意が必要。
234年、廬陵(ろりょう)で李桓(りかん)と羅厲(られい)らが反乱を起こすと、翌235年夏、唐咨も呂岱(りょたい)に付き従って討伐にあたり、翌236年には羅厲を捕らえた。
239年、将軍の蔣秘(しょうひ)が異民族の討伐にあたったところ、都督(ととく)の廖式(りょうしょく)が背く。
廖式は臨賀太守(りんがたいしゅ)の厳綱(げんこう)らを殺害し、勝手に「平南将軍(へいなんしょうぐん)」と称した。
さらに廖式は弟の廖潜(りょうせん)とともに零陵(れいりょう)や桂陽(けいよう)を攻め、交州(こうしゅう)の蒼梧(そうご)や鬱林(うつりん)にも動揺を与えた。
廖式の一味は数万人に上ったが、再び唐咨も呂岱に付き従って討伐にあたり、1年余りで反乱を鎮圧した。
252年、唐咨は諸葛恪(しょかつかく)の命を受け、将軍の留賛(りゅうさん)・呂拠(りょきょ)・丁奉(ていほう)らとともに東興(とうこう)へ向かう。ここで魏の諸葛誕や胡遵(こじゅん)の軍勢を大破した。
256年9月、呉の実権を握っていた孫峻(そんしゅん)が急死し、従弟の孫綝(そんりん)が朝政を取り仕切ることになる。
これに驃騎将軍(ひょうきしょうぐん)の呂拠が反発し、文欽(ぶんきん)や唐咨らとともに上表を行い、衛将軍(えいしょうぐん)の滕胤(とういん)を丞相(じょうしょう)に推した。
しかし孫綝は許さず、滕胤を大司馬(たいしば)に移し、(同じく9月に死去した)呂岱に代わって武昌(ぶしょう)に駐屯するよう命ずる。
そこで呂拠が軍勢をひきいて帰還し、孫綝を討とうとしたところ、孫綝は孫亮(そんりょう)の詔(みことのり)を使い、文欽・劉纂(りゅうさん)・唐咨らに呂拠を捕らえるよう命じた。
同年10月、追い詰められた呂拠は自殺し、その三族(父母・妻子・兄弟姉妹、異説もある)も皆殺しにされた。
翌257年、魏に背いた諸葛誕が淮南(わいなん)で挙兵。息子の諸葛靚(しょかつせい)に長史(ちょうし)の呉綱(ごこう)を付けて呉へ遣わし、救援を求める。
このとき唐咨は、全懌(ぜんえき)・全端(ぜんたん)・王祚(おうそ)・文欽らとともに寿春城(じゅしゅんじょう)へ駆けつけた。
翌258年、城外へ打って出た諸葛誕が戦死し、寿春も陥落する。
唐咨は王祚らともども捕らえられたものの、魏の司馬昭(しばしょう)から許されて安遠将軍(あんえんしょうぐん)に任ぜられた。
管理人「かぶらがわ」より
本伝によると、呉における唐咨は左将軍(さしょうぐん)まで昇り、侯(こう)に封ぜられて持節(じせつ)の資格を得たそうです。
258年に再び魏に仕え、安遠将軍となってからの事績はイマイチはっきりしませんが――。
『三国志』(魏書・鍾会伝〈しょうかいでん〉)によれば、262年に司馬昭が呉討伐を行うよう見せかけた際、唐咨も命を受けて大型船の建造にあたっていました。
魏から呉へ逃げ、呉の援軍として魏に背いた諸葛誕を助けて捕らえられ、また魏に仕えるという。唐咨の経歴はかなりややこしいですね。
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