楊儀(ようぎ) ※あざなは威公(いこう)

【姓名】 楊儀(ようぎ) 【あざな】 威公(いこう)

【原籍】 襄陽郡(じょうようぐん)

【生没】 ?~235年(?歳)

【吉川】 第278話で初登場。
【演義】 第091回で初登場。
【正史】 登場人物。『蜀書(しょくしょ)・楊儀伝』あり。

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独りよがりの性格が災いし、諸葛亮(しょかつりょう)の後継者になれず

父母ともに不詳。楊慮(ようりょ)は兄。

楊儀は、建安(けんあん)年間(196~220年)に荊州刺史(けいしゅうしし)の傅羣(ふぐん)に仕えて主簿(しゅぼ)を務めた。

後に傅羣に背き、襄陽太守(じょうようたいしゅ)の関羽(かんう)のもとへ行く。そして功曹(こうそう)に任ぜられ、西方にいた劉備(りゅうび)への使者として遣わされた。

楊儀は劉備と軍事や政事について語り合い、大いに気に入られ、そのまま左将軍兵曹掾(さしょうぐんへいそうえん)として留められた。

このとき劉備は漢(かん)の左将軍だった。

219年、劉備が漢中王(かんちゅうおう)になると、楊儀は尚書(しょうしょ)に抜てきされる。

221年、劉備が帝位に即き、孫権(そんけん)討伐のため東征に出向いた際、楊儀は尚書令(しょうしょれい)の劉巴(りゅうは)と対立したことから、遠方の(名目上の)弘農太守(こうのうたいしゅ)に左遷された。

225年、楊儀は、丞相(じょうしょう)の諸葛亮の参軍(さんぐん)となって丞相府の業務を取り仕切り、南征にも随行する。

227年、再び諸葛亮に付き従い、漢中へ赴く。

230年、楊儀は丞相長史(じょうしょうちょうし)に昇進し、綏軍将軍(すいぐんしょうぐん)の官位を加えられる。

このころ諸葛亮は北伐のために出兵を繰り返したが、いつも楊儀が手際よく、部隊の編制や兵糧の計算を行うなどして補佐した。

軍需物資の調達も楊儀の手によるところが大きかったので、諸葛亮は彼の才幹を愛惜しながらも、一方では魏延の豪勇を頼りにしていた。

楊儀と魏延は仲が悪く、諸葛亮は残念に思っていたものの、どちらかを辞めさせることまではできなかったという。

234年、楊儀は諸葛亮に付き従って出陣し、谷口(こうこく)に駐屯する。

同年秋、諸葛亮が陣没すると、楊儀は軍勢をひきいて帰還を果たし、撤退時に対立した魏延を誅殺。彼は大功を立てたことから、自分が諸葛亮に代わって政治を行うのが当然だと考えた。

そこで都尉(とい)の趙正(ちょうせい)を呼び、『周易(しゅうえき)』をもって占わせたところ、家人(かじん。家庭内の役割を表す)の卦(け)が出る。楊儀は黙り込んで不愉快な様子を見せた。

結局は蔣琬(しょうえん)が尚書令となり、益州刺史(えきしゅうしし)を兼ねることになる。楊儀は成都に帰還した後で中軍師(ちゅうぐんし)に昇進したが、特に職務はなかった。

以前、楊儀が劉備の下で尚書を務めていたころ、まだ蔣琬は一介の尚書郎(しょうしょろう)にすぎなかった。

後にふたりとも諸葛亮の下で丞相参軍・長史を務めたものの、楊儀はいつも諸葛亮に随行して激務をこなし、年齢や官位も蔣琬より上で、彼より自分のほうが才能があると思い込んでいた。

そのため蔣琬が諸葛亮の跡を継いだことへの不満が、声や顔色に表れ、嘆息や舌打ちが体の中から湧き起こってくる。

当時の人々は、楊儀の発言に節度がないことを恐れ、同情する者もいなかったが、ただ後軍師(こうぐんし)の費禕(ひい)だけは彼のもとへ通って慰めた。

楊儀は費禕に様々な不満をぶつけたうえ、こうまで言った。

「丞相がお亡くなりになったとき、もし私が軍勢を挙げて魏氏(ぎし。魏の曹氏〈そうし〉)に付いていたら、世にあってこのように落ちぶれる羽目になっていただろうか。まさに後悔先に立たずだ!」

この発言は、費禕によって密かに上奏される。

翌235年、楊儀は免官のうえで庶民に貶(おと)され、漢嘉郡(かんかぐん)へ流された。

ところが配所に着いた後、またも楊儀は上書して激しい誹謗(ひぼう)の言葉を書き連ねたため、ついに逮捕されて自殺した。ただ、彼の妻子は蜀(おそらく都の成都〈せいと〉の意)への帰還を許されたという。

管理人「かぶらがわ」より

本伝によると、諸葛亮は楊儀について、普段から密かにこう語っていたそうです。

「楊儀は性格が狷介(けんかい。頑固で心が狭く、他人と調和しない様子)で偏狭(頑固に意地を通す様子)だから、私の後継者には蔣琬を考えている」

諸葛亮は、楊儀の仕事ぶりに一定の評価をする一方で、後事を託せるほどの器ではないとも、早くから見ていたということに……。

しかし、本当に中軍師しか空きポストがなかったのでしょうか? その点からすれば、楊儀の不満も理解できなくはないなと思いました。

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