柴桑(さいそう)に戻った周瑜(しゅうゆ)は、魯粛(ろしゅく)を介して諸葛亮(しょかつりょう)を自邸に招き、3人だけで話してみる。
この席で諸葛亮は、あえて周瑜を怒らせるような一計を語って聞かせ、彼が曹操(そうそう)との開戦を孫権(そんけん)に進言するよう仕向けた。
第38話の展開とポイント
(01)柴桑
魯粛が諸葛亮の無礼な態度をなじる。しかし諸葛亮は、良策があるのに孫権から尋ねられなかったと応ずる。
★ここで諸葛亮が魯粛に、「呉(ご)を見下しているのは私ではない。曹操です……」と言っていた。この時点で「呉」という呼び方は引っかかる。「江東(こうとう)を見下しているのは……」でよかったのでは?
孫権が諸葛亮のところに戻り、改めて話を聴く。諸葛亮は曹操軍の弱みを挙げ、その実力は10万程度だと語り、孫権も開戦に傾く。
その夜、張昭(ちょうしょう)が孫権を諫め、諸葛亮の奸計(かんけい)に乗ってはならないと説く。
(02)周瑜邸
周瑜が柴桑の自邸に戻る。ほどなく孫権配下の重臣たちが次々に訪ねてくる。
1組目は張昭・顧雍(こよう)・歩騭(ほしつ)・薛綜(せつそう)の4人で、彼らは降伏派。2組目は程普(ていふ)・黄蓋(こうがい)・周泰(しゅうたい)・韓当(かんとう)の4人で、彼らは決戦派。
★2組目の4人は武装して周瑜を訪ねていた。これは無礼なのでは?
3組目は諸葛瑾(しょかつきん)・呂範(りょはん)・陸績(りくせき)とほかひとり(名前が紹介されなかった)の計4人で、彼らは降伏派寄り。4組目は呂蒙(りょもう)・甘寧(かんねい)・徐盛(じょせい)・丁奉(ていほう)の4人で、彼らは決戦派。
★4組目の4人も武装していた。視聴者が文官と武官の区別をしやすいよう配慮しているのかもしれない。
最後に5組目として魯粛と諸葛亮がやってくる。周瑜は書斎に通して話を聴く。
★ここで魯粛から、なぜ書斎に書物がひとつもないのかと尋ねられた周瑜が、「焼いてしまった。読み終われば全部燃やす……」と答えていた。これに諸葛亮も、周瑜に親しみを覚えた、と応じていたが……。貴重な書物を焼くというのはひどい話で、周瑜のイメージにも合わない設定だろう。
周瑜がふたりに、「明日、主君には降伏をお勧めする」と告げる。
そこで諸葛亮は一計があると切り出し、大喬(だいきょう)と小喬(しょうきょう)を曹操のもとに送れば戦を避けることができると述べ、(小喬の夫である)周瑜を怒らせる。
★このあと諸葛亮は周瑜に、「曹操は一風変わった好みの持ち主でして、若い生娘より人妻を好むのです」とも言い、曹操に狙われた人妻の例として張済(ちょうさい)の妻の鄒氏(すうし)、袁術(えんじゅつ)の愛妾のゴ氏(?)、呂布(りょふ)の愛妾の貂蝉(ちょうせん)の名を挙げていた。
曹操が好色だったというのは否定しないが、人妻好きは晩年の劉備(りゅうび)にも当てはまる。このネタで曹操を貶めようとしていたのは引っかかった。
(03)周瑜邸からの帰り道
諸葛亮が魯粛に問われ、大喬と小喬が誰の妻なのか知っていたことを明かす。
★2頭立ての馬車で帰っていくふたり。車内に灯火が置かれていたが、揺れなどで燃え移らないか心配。天井部分もやけに明るく、どのような設計の馬車を想定しているのか見えなかった。ちなみに当時の馬車は、老人や女性用の安車(あんしゃ)を除き、立ったまま乗る構造だったという。
★また、ここで諸葛亮が魯粛に、「(曹操の)12人の妻や側室のうち、10人がもともと他人の妻や側妻(そばめ。妾)だったのです」とも言っていた。これはそういう設定にしたのか、いくらか史実を反映したものなのかよくわからなかった。
(04)周瑜邸
翌朝、周瑜が軍議に向かう。
(05)柴桑
孫権が群臣を集めて軍議を開く。この場で周瑜が熱弁を振るい、曹操との決戦を主張する。
孫権は剣を抜いて机の角を斬り落とし、決戦の決意を示す。そして周瑜を大都督(だいととく)、程普を副都督、魯粛を賛軍校尉(さんぐんこうい)にそれぞれ任じ、精鋭5万をひきいて夏口(かこう)へ出撃するよう命ずる。
また孫権は、降伏を主張していた張昭をソウテイ長官(?)に任ずる。
★このとき孫権が張昭にこう言っていた。「私が生まれる前から、そなたはすでに江東の重鎮であった。この30年、心を尽くしたそなたの補佐がなければ、父兄も今日(こんにち)の礎は築けず、わが江東に繁栄はなかったであろう……」。このフレーズには不思議な表現が目立った。
孫権は改めて張昭を東呉(とうご)ソウテイ長官に任じ、東呉全軍の物資供給を管理するよう命ずる。さらに顧雍・歩騭・薛綜を副テイ長官に任じ、張昭の補佐を命ずる。
(06)周瑜邸
魯粛が周瑜を訪ね、孫権が軍議の場で皆の結束を固めたことを喜ぶ。
★ここで周瑜が孫劉連盟の盟主について触れた後、諸葛亮の考えを推測し、「江東が勝てば、機に乗じ荊州(けいしゅう)を取る。曹操が勝てば、江東を取ればよい……」と言っていた。前の第37話(01)にも出てきたが、後者の実現の可能性はないと思う。
周瑜は諸葛亮を亡き者にすべきだと言いだすが、魯粛に諫められて思いとどまる。その代わり魯粛に、諸葛亮を説得して寝返らせるよう頼む。
魯粛は説得役の適任者として諸葛瑾(しょかつきん)の名を挙げ、周瑜も同意する。
管理人「かぶらがわ」より
周瑜や孫権を煽(あお)る諸葛亮。夜の周瑜邸を次々に訪ねる江東の重臣。そして諸葛亮の活躍により、自身を孫権に高く買わせることに成功した劉備。
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。
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