吉川『三国志』の考察 第014話「打風乱柳(だふうらんりゅう)」

劉備(りゅうび)が県尉(けんい)を務める安喜県(あんきけん)にやってきて、無茶な要求をほのめかす勅使の督郵(とくゆう)。

ついに張飛(ちょうひ)が横暴に耐えかね、督郵一行が滞在する県の役館の門を壊して乱入。そこで督郵の姿を見つけると――。

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第014話の展開とポイント

(01)安喜県 役館

泥酔した張飛が、督郵が泊まっている役館の門を壊して躍り込む。

奥にいた督郵を抱えて門外へ出ると、その体を大地に叩きつけて罵る。次いで門前の大きな柳の木に吊るすと、柳の枝を折って督郵を打ち始め、やがて200回以上にもなった。

私邸に閉じ籠もっていた劉備のもとに、張飛が督郵を打ち据えているとの知らせが届く。劉備は居合わせた関羽(かんう)とともに駆けつける。

劉備の姿を見つけた督郵は卑しい言葉を吐いて助けを求め、かえって彼の張飛を制止しようという気持ちを削いだ。

それでも劉備は、あくまで督郵が勅使であることに思いを致し、張飛の手から柳の枝を奪って肩を打つ。さらに縄を解き、督郵の体を下ろした。

ここで関羽から、我々は住むところを誤ったと説かれ、いったん身を退いて、別に遠大の計を図り直すよう勧められる。

劉備は胸に掛けていた県尉の印綬(いんじゅ。官印と組み紐〈ひも〉)を解き、督郵に官を捨てることを告げて立ち去った。

管理人「かぶらがわ」より

役館の門をぶち壊し、督郵をビシビシ打ち据える張飛。読み手としては「いい気味だ」といったところなのでしょうが――。

『三国志』(蜀書〈しょくしょ〉・先主伝〈せんしゅでん〉)やその裴松之注(はいしょうしちゅう)に引く魚豢(ぎょかん)の『典略(てんりゃく)』によると、督郵を杖で200回(『典略』では100回余り)も打ち据えたのは、張飛ではなく劉備でした。

こういったすり替え的な設定には、いくらか引っかかるものがあります。

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