劉備(りゅうび)は洛陽船(らくようぶね)の商人から買った茶に加え、父の遺物(かたみ)の剣まで黄巾賊(こうきんぞく)の李朱氾(りしゅはん)と馬元義(ばげんぎ)に取り上げられてしまう。
だが、寺の老僧の助けにより窮地を脱し、彼にかくまわれていた鴻芙蓉(こうふよう)という美女を連れ、馬で北の河べりを目指す。
第003話の展開とポイント
(01)荒れ果てた寺
黄巾賊の李朱氾らが馬元義と合流。馬元義に昨夜からの(略奪の)収穫(みいり)を尋ねられた李朱氾は、「一村を焼き払っただけのものはあった」と答えつつ、洛陽船から茶を交易した男を取り逃がしたとも話す。
その男の風体を聞いた馬元義は、そばにいる劉備を指さし、「じゃあ、この男ではないのか?」と言った。李朱氾は手下の丁峰(ていほう)を呼んで顔を確認させ、茶を買った男が劉備だと確信する。
劉備は佩(は)いていた父の遺物の剣を馬元義に差し出したうえ、茶の入った錫(すず)の小壺(こつぼ)も李朱氾に差し出すことになった。
その日、馬元義らは寺に泊まる。劉備は夕暮れ時を待って逃げ出そうとしたが、黄巾の哨兵(しょうへい)に見つかる。彼は斎堂(さいどう)の丸柱にくくりつけられた。
絶体絶命と思われたが、夜中になり、斎堂の高い切窓の口から短剣の付いた縄が下りてくる。彼を助け出そうとしたのはこの寺の老僧だった。おかげで斎堂から脱出できた劉備。老僧に言われるまま、寺の裏の疎林に立つ古塔へ向かう。
(02)寺の古塔
老僧が古塔の中から一頭の白馬を引き出したかと思うと、それとともにひとりの美女が姿を現す。老僧は劉備に、先に黄巾賊に殺された領主の娘(姓は鴻〈こう〉、名は芙蓉〈ふよう〉)をかくまっていたことを明かし、10里ほど北の河べりにいる県軍の部隊まで送り届けてほしいと頼む。
劉備は頼みを承諾。鴻芙蓉と一緒に白馬に乗り、古塔の頂に上がった老僧の指さす方角へと駆け出す。様子を見届けた老僧は舌をかみ、古塔から身を投げて果てた。
管理人「かぶらがわ」より
意表を突く形で鴻芙蓉が登場。「彼女が後の――」となるのが吉川『三国志』のひとひねり。このあたりは『三国志演義』と筋が違うため、後で設定としては苦しくなっていますが、ここまでの数話の入り方はかなり練られたものだと感じました。
テキストについて
『三国志』(全10巻)
吉川英治著 新潮社 新潮文庫
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。
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