吉川『三国志』の考察 第078話 「秘勅を縫う(ひちょくをぬう)」

これまで数々の苦難を堪え忍んできた献帝(けんてい)だったが、このところの曹操(そうそう)の専横ぶりにはさすがに不安を募らせる。

そこで伏皇后(ふくこうごう)の父である伏完(ふくかん)と相談のうえ、車騎将軍(しゃきしょうぐん)の董承(とうじょう)に秘勅を下し曹操の排除に動きだす。

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第078話の展開とポイント

(01)許都(きょと) 禁中(宮中)

献帝(けんてい)は世の行く末を思い、その日も終日、暗い顔をしていた。伏皇后(ふくこうごう)と涙ながらに嘆き合っていると、そこへ皇后の父の伏完(ふくかん)が入ってくる。

伏完は曹操(そうそう)調伏の意中を打ち明け、献帝も心を動かす。伏完は車騎将軍(しゃきしょうぐん)の董承(とうじょう)を召し、密詔を下すよう勧めた。

深く思い悩んだ献帝だったが、自ら指を食い破り、白絖(しろぎぬ)の玉帯に血潮をもって詔(みことのり)をしたためる。伏皇后に命じてこれに紫錦(しきん)の裏を重ねさせ、玉帯の芯(しん)に縫い込ませた。

紫錦についてはよくわからなかった。ちなみに錦(にしき)は、いろいろな色糸や金銀の糸を横糸に使い、きれいな模様を織り出した厚い高価な織物。なお紫金襴(しきんらん)は既出で、先の第31話(01)を参照。

そして董承を伴い功臣閣(こうしんかく)に登ると、漢(かん)の高祖(こうそ。劉邦〈りゅうほう〉)が建国した際の経緯を説くよう言う。董承は困惑しながらも高祖のことを話すが、献帝は自責して涙を流す。

さらに話は高祖の両側に描かれている張良(ちょうりょう)と蕭何(しょうか)に及んだが、献帝は突然、身をかがめて董承の手を取り、今後は張良や蕭何のように務めてほしいとささやく。

献帝は功に報いると言い、手ずから御衣と玉帯を下賜する。しばらく董承は感泣していたが、拝受したふた品を携えほどなく宮中から退出。

すると早くも、この日の献帝と董承の行動はもう曹操の耳に入っていた。曹操はにわかに車や供ぞろえを命じ、あわただしく参内。

禁衛(近衛軍)の門で、献帝が大廟(たいびょう。天子〈てんし〉の祖先をお祭りした御霊屋〈みたまや〉)に詣(もう)でてから功臣閣に登っていると聞くと、宮門の外に車を置き、せわしげに禁中へ進んでいく。

南苑(なんえん)の中門まで来たところ、彼方から退出してくる董承とばったり出くわす。董承は顔色を変え苑門の傍らに避けていたが、曹操は声をかけながら歩み寄る。

献帝から御衣と玉帯を賜ったことを聞くと、曹操は強いてそのふた品を見せるよう言い、日にかざしたりして調べてみた。しかし、特に怪しいものは見つからない。

董承は恩賜の品を譲ってほしいと言われるが、とんでもないことだと拒絶。なお曹操が、何かこの中に謀略が秘めてあるのではないかと疑うと、董承はやむなくふた品を献ずると言う。

これを聞き、急に冗談だと打ち消す曹操。ふた品を返し、足早に宮殿のほうへ立ち去った。

管理人「かぶらがわ」より

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吉川『三国志』 (04) 臣道の巻
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