鴻芙蓉(こうふよう)とともに河べりまで馬で駆けた劉備(りゅうび)だったが、老僧が話していた県軍の姿は見えない。
そのうち追いついた黄巾賊(こうきんぞく)の矢を受け乗馬が倒れ、やむなく劉備は7人の賊を相手に戦うも、そのときひとりの男が現れる。
第004話の展開とポイント
(01)河のほとり
劉備は老僧から託された鴻芙蓉とともに白馬で駆け続け、河べりにいるという県軍の陣を目指す。
ところが河畔まで来ても県軍の姿はなく、追いついてきた黄巾賊の一矢を喉に受け、乗っていた白馬が倒れた。
大地に放り出された劉備は起ち上がり、賊たちを大喝すると、7人を相手にしばらく抵抗を見せる。しかし、ついに黄巾賊の小方(しょうほう)である李朱氾(りしゅはん)の剣が、劉備の胸板に突きつけられた。
だがそこへ、近ごろ(黄巾賊の)卒の中に入ったという下っ端の張飛(ちょうひ)が走って駆けつけ、李朱氾を投げ飛ばす。これを見た黄巾賊の小方たちは総掛かりで張飛に挑むも、逃げ去った2、3人を除き、みな投げ飛ばされて死んでしまった。
劉備は張飛から、先に馬元義(ばげんぎ)に差し出した父の遺物(かたみ)の剣と、李朱氾に差し出した茶の入った小壺(こつぼ)を手渡される。これは混乱の中から彼が奪い返してくれたものだった。
劉備は礼として剣のほうを張飛に手渡す。そして鴻芙蓉を託し、彼がもとから持っていた剣を譲り受けると、賊が捨てた驢(ロ)に乗ってふたりと別れた。
★張飛は鴻家(鴻芙蓉の実家)に仕える武士で、県城の南門衛少督(なんもんえいしょうとく)を務めていたという設定になっている。彼が公用で他県へ行っていた間に、県城が黄巾賊の襲撃を受けて主君が殺された。その恨みを晴らそうと身を偽り、敗走兵に化けて賊の中に卒となり隠れていたのだとも。
★なお、吉川『三国志』や『三国志演義』では張飛のあざなを翼徳(よくとく)としていたが、史実では益徳(えきとく)とある。
★最後の別れの場面がいくらか引っかかった。張飛と鴻芙蓉は白馬に乗っていたようだが、この白馬は喉に矢を受けて倒れたのでは? 賊から別の白馬を奪ったという解釈もできなくはないが、賊の小方たちは馬ではなく驢に乗ってきたようだし……。ここはちょっと苦しいと思う。
管理人「かぶらがわ」より
張飛と出会った劉備。ここですぐに張飛が仲間になる、という展開ではありません。鴻芙蓉ともすんなりくっつかないのですね。
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吉川英治著 新潮社 新潮文庫
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。
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