劉備(りゅうび)が劉璋(りゅうしょう)の要請を受け入れ益州(えきしゅう)に留まっている間、荊州(けいしゅう)に残っていた妻の孫小妹(そんしょうめい)のもとに、母の呉国太(ごこくたい)が重病との知らせがもたらされる。
孫小妹は劉備の息子の阿斗(あと)を伴い、急いで帰国しようと馬車に乗る。だが、事態を察した諸葛亮(しょかつりょう)の指示により、張飛(ちょうひ)と趙雲(ちょううん)が阿斗の身を取り返して事なきを得た。
第65話の展開とポイント
(01)涪城(ふうじょう)の近郊 劉備の軍営
法正(ほうせい)が劉備に張松(ちょうしょう)から届いた密書を見せ、劉璋が成都(せいと)を離れ、涪城で出迎えることを伝える。
★ここで劉備が法正に、「(涪城は)成都からは360里。実に心のこもったもてなしだ」と言っていた。
法正と龐統(ほうとう)は劉備に、この機会を利用し、劉璋を盾として成都へ攻め入るよう勧める。
さらに龐統は、劉璋が到着したら宴席の近くに100人の兵を潜ませておき、杯を投げて合図し、一挙に劉璋を殺害するという策を献ずる。
しかし、ふたりの話を聞いた劉備は怒って立ち去ってしまう。
劉備のもとに、劉璋が20里先まで来ているとの知らせが届く。劉備は魏延(ぎえん)に命じ、軍威を示さぬよう兵を下げさせる。
龐統は魏延を呼び止め、旗を多く掲げたうえ、武具を(前面に)出さないよう助言する。
張任(ちょうじん)ひきいる3千の前軍に続き、劉璋も到着。劉備は挨拶を交わしたあと酒宴を催す。
★ここで劉備が劉璋から兵馬について尋ねられ、「こたびは歩兵が2万、騎馬兵が1万。計3万の兵が先駆けとなり、生死をいとわず戦いましょうぞ」と答えていた。
★ほかにも劉備が劉璋に、「また劉璋どのが、兵馬を(益州に)置いて帰るようにとおっしゃるのなら、私は全兵馬を劉璋どのに贈り、単身荊州へ戻ります」とも言っていた。劉璋が言葉通りに受け取るはずはないとしても、この発言はあまりに噓くさい。
龐統が目で合図を送ると魏延が立ち上がり、酒宴の余興にと剣舞を始める。ほどなく張任が魏延の意図に気づき、相手役として剣舞に加わる。やがて双方の武将たちも剣舞に加わり、宴席は騒然となる。
ここで劉備が皆を一喝し、魏延らに剣を置くよう命ずる。劉璋も張任に剣を置くよう命ずる。
(02)成都
劉璋のもとに、張魯(ちょうろ)が2万の兵をひきいて葭萌関(かぼうかん)に攻め寄せたとの知らせが届く。
劉璋は張任の進言を容れ、劉備に迎撃を要請する。この要請を受け、劉備は軍勢をひきいて葭萌関へ向かう。
張任が劉璋に、劉備が軍勢をひきいて葭萌関へ向かったことを伝える。これを聞いた劉璋は、張任に先帝から賜ったという羽織を預け、葭萌関の劉備に贈るよう命ずる。
(03)揚州(ようしゅう) 柴桑(さいそう)
孫権(そんけん)のもとに、劉備が軍勢をひきいて出陣したとの知らせが届く。
程普(ていふ)らは孫権に、手薄になった荊州を攻めるよう進言。しかし呂蒙(りょもう)は、呉国太が荊州への出兵を許さないと述べる。孫権は荊州の防備が緩むのをしばらく待つことにする。
(04)魯粛邸(ろしゅくてい)?
孫権が魯粛を見舞う。孫権は呂蒙を副都督(ふくととく)に抜てきする考えを伝え、魯粛も賛同する。
(05)柴桑
呂蒙が副都督に任ぜられ、江東(こうとう)の水軍を取り仕切ることになる。
(06)荊州 襄陽(じょうよう)
周善(しゅうぜん)が孫小妹を訪ねる。周善は呉国太が重病だと伝え、呉国太から預かったという書状を手渡す。
諸葛亮のもとに、孫小妹が阿斗を連れて城を出たとの知らせが届く。諸葛亮は孫小妹が残した書簡で事態を把握し、趙雲に追わせる。
(07)襄陽の郊外
趙雲が孫小妹の馬車に追いつき、阿斗を取り戻す。
★ここで幼児の阿斗が初登場。ただしセリフはなかった。
周善は孫小妹に、あくまで阿斗も連れていくよう主張。そこへ張飛も兵をひきいて駆けつけ、周善を討ち取る。
孫小妹がこの場で自害すると言いだしたため、張飛と趙雲は孫小妹の帰国を承諾する。
(08)涪城
張魯軍を漢中(かんちゅう)へ退けた後、劉備らが戻る。龐統は劉備に、劉璋の待遇が悪くなっていることを伝える。
これまでは毎月、兵糧3万石(ごく)と軍禄5万銭を成都から送ってきていたが、張魯を撃退した後は兵糧が減っており、先月は2千石のみで軍禄はなし。今月は兵糧も皆無だと。
これを聞いた劉備は龐統に、自ら劉璋に書状を書いて求めると答える。
劉備のもとに、孫小妹が帰国したとの知らせが届く。
大酒をあおる劉備に、龐統は上中下の3つの計を献ずる。
上計は、劉璋と反目する前に魏延と黄忠(こうちゅう)に2万の精鋭をひきいさせ、成都に夜襲をかけるという計。
中計は、劉備が荊州への凱旋(がいせん)を装って雒城(らくじょう)の将軍を見送りにおびき出し、機会を逃さず捕らえ、雒城を足場にして成都を取るという計。
下計は、夜を徹して白帝城(はくていじょう)へ退き、荊州へ引き揚げるという計。
劉備はいずれの計を採るとも言わず、なお劉璋に兵糧を求めるだけにし、その出方を見極めようとする。一方で蜀取りへの強い意欲も示す。
管理人「かぶらがわ」より
劉璋と顔を合わせ、下心がないことを雄弁に語る劉備でしたが――。
この第65話では、タイトルに含まれる「江を遮る」シーンがなかったですね。張飛も趙雲も馬で孫小妹に追いついていましたし……。
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。
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