涼州(りょうしゅう)の馬騰(ばとう)は詔(みことのり)を拝受し、孫権(そんけん)討伐のため5千の騎兵をひきいて出発した。
そして道中で許都(きょと)に立ち寄り、曹操(そうそう)の丞相府(じょうしょうふ)で開かれた酒宴に参加する。
第60話の展開とポイント
(01)丞相府
曹操が司馬懿(しばい)に、曹丕(そうひ)ではなく曹植(そうしょく)の師傅(しふ)として仕えるよう命ずる。しかし司馬懿は従わず、曹操から出ていくよう言われる。
(02)許都の郊外
曹丕が司馬懿を城外まで追いかける。
(03)丞相府
曹操が荀彧(じゅんいく)に、司馬懿は遠くへは行かないとの見立てを話す。
★ここで荀彧が、曹操がたとえに持ち出した終南山(しゅうなんざん)について説明していた。
曹操が修繕の済んだ庭を見て回り、門に「活」の字を書き残す。
★ここで出てきた「カツ」の字は古い字体でよくわからなかった。
楊修(ようしゅう)は皆に、「『門』に『活』と書けば『闊(ひろい)』という文字。丞相はこの門が広いのがお嫌なのだ」と言い、すぐに門を取り壊すよう伝える。
曹操の机の上に「一合酥(いちごうそ)」と書かれた札が載った小箱が置かれていた。これは馬騰が曹操に贈った酥だった。
楊修は「一合酥」を「一人一口酥(ひとりひとくちのそ)」と解釈し、その場にいた者たちに分けて食べさせた。戻ってきた曹操は楊修から話を聞き、その賢さを褒めるが――。
★ここでは酥を白い菓子として登場させていた。
荀彧が曹操から馬騰への対策を尋ねられ、中原(ちゅうげん。黄河〈こうが〉中流域)への進出を願っている馬騰を征南将軍(せいなんしょうぐん)に任じ、孫権討伐の名目で南下させるという策を献ずる。狼(オオカミ)をもって狗(イヌ)を討つの計だと。
その狙いは、馬騰と孫権が激戦を繰り広げている隙に曹操が攻撃を仕掛け、どちらも滅ぼしてしまうというものだった。
曹操は荀彧の計に手を加え、馬騰を大将軍(だいしょうぐん)に任じたうえ兵糧1万石(ごく)と絹織物を与え、西涼軍(せいりょうぐん)をもって孫権を討たせようとする。
これは馬騰が軍勢をひきいて許都を通る際、必ず天子(てんし。献帝〈けんてい〉)に謝意を述べると読み、その機に乗じて馬騰親子を捕らえようとのもくろみだった。馬騰親子さえ捕らえれば、烏合の衆となった西涼軍は朝廷(実質的には曹操)に帰順するだろうとも。
★ここでのやり取りの中で曹操が荀彧に、中秋の前夜に馬騰が天子に1万キン(金?)と多くの果物や酥を献上したこと。ところが自分のもとには、例の酥をひと箱だけ贈ってきたことを話していた。
(04)涼州 馬騰の軍営
馬騰のもとに、大将軍に任じたうえ孫権の討伐を命ずるとの詔が届く。
★ここで韓遂(かんすい)が馬騰に、「大将軍となれば三公と匹敵する地位……」と言っていた。だが、大将軍は非常設ながら上公の格であり、三公に匹敵ではなく三公より格上となる。
馬騰は5千の騎馬兵のみをひきいて許都へ赴くことを決意。この際、韓遂や馬超(ばちょう)らと策を講じ、仲たがいを装うことにする。
馬騰は馬岱(ばたい)と馬鉄(ばてつ)に随行を命ずる。
★ここで馬騰が、自分の先祖は伏波将軍(ふくはしょうぐん)だと言っていた。これは史実で馬援(ばえん)のことを指す。
★また、ここで馬騰が「わしはとうに50を過ぎ、先は短い……」とも言っていた。馬騰の年齢については正史『三国志』に記事がない。
(05)司馬懿邸
曹丕が司馬懿を訪ね、ともに釣りをしながら主簿(しゅぼ)の楊修の評判が高いという話をする。しかし司馬懿は楊修の振る舞いを聞き、そのように賢いと長生きしないだろうと皮肉る。
さらに曹丕は、曹操が詔を使って馬騰を大将軍に任じ、孫権討伐を命じたことも話す。これを聞いた司馬懿は曹操の真意を見抜く。
(06)許都
黄奎(こうけい)が馮二(ふうじ)と密会し、馬騰の書状を受け取る。
★ここでは馮二の字幕紹介がなかった。ドラマの公式サイトを見て表記はわかったが、オリジナルキャラだろうか?
(07)丞相府
曹操が荀彧から、西涼軍で馬騰に対する内乱が起きたとの報告を受ける。馬騰は5千の残兵を引き連れて関中(かんちゅう)に到着し、曹操に受け入れを求めているとも。
曹操はうさん臭い話だと結論づけ、詔を使って韓遂を鎮南将軍(ちんなんしょうぐん)に任じ、西涼を治めさせる。馬超のほうは偏将軍(へんしょうぐん)に任じ、今回の内乱で奪った物を褒美とする。
(08)許都の郊外
馬騰が曹丕の出迎えを受ける。
(09)丞相府
曹操が馬騰を招き、酒宴を催す。この席で馬騰は西涼を奪還したいと述べ、曹操は数日後に3万の青州軍(せいしゅうぐん)を授けると応ずる。
(10)馬騰の軍営
曹操の命を受け、曹彰(そうしょう)と黄奎が馬騰を訪ねる。
馬騰は前日に丞相府で飲みすぎたためまだ休んでいるとのことで、曹彰は軍営を視察した後、黄奎より先に帰る。
★このシーンで「馬謄軍 野営」という字幕が表示されたが、「馬謄軍」は「馬騰軍」の誤りだろう。
(11)丞相府
曹彰が曹操に、馬騰の軍営の様子を「まさに敗軍という様相です」と報告。曹操は馬騰に疑念を抱かせないよう、監視に付けていた2万の兵に撤退を命ずる。
(12)馬騰の軍営
黄奎が馬騰と会って真意を聴くと、夜半にたいまつを合図に許都の南門を開き、内応する手はずを整える。
★このシーンでも「馬謄軍 野営」という字幕が表示された。ここも「馬謄軍」は「馬騰軍」の誤りだろう。
★またここで黄奎が馬騰に、「妻の弟の苗沢(びょうたく)は許都の城門吏(じょうもんり)です……」と言っていた。
(13)黄奎邸
苗沢が李春香(りしゅんこう)と密会。そこへ黄奎が帰ったとの知らせが届く。
★この第60話では苗沢の字幕紹介がなかった。李春香に至ってはセリフの中に名前すら出てこず、ドラマの公式サイトで確認した。ふたりはドラマのオリジナルキャラではなく、吉川『三国志』(第181話)や『三国志演義』(第57回)にも登場する。ただしふたりとも正史『三国志』には見えない人物である。
管理人「かぶらがわ」より
許都へ乗り込む馬騰。その心意気は評価できますけど、曹操に策で対抗というのは……。
楊修はデキの良さをひけらかしてしまう男。やがて司馬懿の予言が的中することに。人は出るところと引くところのバランスが難しいですね。
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。
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