許靖(きょせい)

【姓名】 許靖(きょせい) 【あざな】 文休(ぶんきゅう)

【原籍】 汝南郡(じょなんぐん)平輿県(へいよけん)

【生没】 ?~222年(?歳)

【吉川】 第204話で初登場。
【演義】 第065回で初登場。
【正史】 登場人物。『蜀書(しょくしょ)・許靖伝』あり。

「月旦評(げったんひょう)」で名声を博するも、実質は伴わず

父母ともに不詳。許瑒(きょちょう)は従兄で、許劭(きょしょう)は従弟。息子の許欽(きょきん)は許靖より先に亡くなったものの、孫の許游(きょゆう。許欽の息子)がいた。

許靖は若いころ許劭ともども人物を評価することにより名を知られたが、ふたりの仲は良くなかった。やがて許劭は郡の「功曹(こうそう)」となったが、従兄の許靖を取り立てようとしなかったため、彼は馬磨きなどをして生計を立てたという。

劉翊(りゅうよく)が「汝南太守(じょなんのたいしゅ)」となると、許靖を「計吏(けいり)」に推挙し、さらに孝廉(こうれん)に挙げた。許靖は朝廷に入って「尚書郎(しょうしょろう)」に任ぜられ、官吏の選抜を担当。

189年、霊帝(れいてい)が崩じ董卓(とうたく)が実権を握ると、許靖は吏部尚書(りぶしょうしょ)の周ヒ(しゅうひ。比+必)とともに人事を任せられた。

許靖と周ヒは汚職官吏を追放する一方、まだ世に知られていない人物を見いだし、昇進が遅れている者を抜てきした。

そのうち許靖自身にも「巴郡太守(はぐんのたいしゅ)」への昇進話が持ち上がったが、彼は受けようとせず「御史中丞(ぎょしちゅうじょう)」に任ぜられた。

翌190年、許靖らの推薦により「冀州牧(きしゅうのぼく)」となっていた韓馥(かんふく)などが、反董卓を旗印に挙兵する。これに腹を立てた董卓が周ヒを処刑してしまうと、許靖は豫州刺史(よしゅうしし)の孔伷(こうちゅう)のもとへ逃れた。

そして、孔伷が死去すると揚州刺史(ようしゅうしし)の陳禕(ちんい)を頼り、その陳禕も死去すると、昔なじみの呉郡都尉(ごぐんとい)の許貢(きょこう)や会稽太守(かいけいたいしゅ)の王朗(おうろう)のもとへ身を寄せた。許靖は親類だけでなく、同じ邑(むら)の人々も大切に扱い、生活の面倒まで見たという。

196年、孫策(そんさく)が江東(こうとう)に進出してくると、許靖らは船で交州(こうしゅう)へ逃げ、交阯太守(こうしたいしゅ。交趾太守)の士燮(ししょう)に厚遇された。

のち許靖は益州牧(えきしゅうぼく)の劉璋(りゅうしょう)の招きを受けて蜀へ入り、「巴郡太守」や「広漢太守(こうかんのたいしゅ)」を務めた。

211年、「蜀郡太守」に転ずる。

214年、劉備(りゅうび)が劉璋を降して成都(せいと)に入ると、許靖は「左将軍長史(さしょうぐんちょうし)」に任ぜられた。

このとき劉備は漢(かん)の「左将軍」だった。

219年、劉備が「漢中王(かんちゅうおう)」になると「太傅(たいふ)」に昇進。

221年、劉備が帝位に即くと「司徒(しと)」に転じた。

翌222年、許靖は死去したが、すでに息子の許欽は亡くなっていたため孫の許游が跡を継いだと思われる。

管理人「かぶらがわ」より

よほど人物評価が適切だったのでしょうけど、許靖は名声の高さと自身の行いがちぐはぐですよね。

裴松之(はいしょうし)が指摘しているように、孫策が来たからといって在野の士にすぎない許靖に害を及ぼすとは思えません。それなのに許靖は遠く交州まで逃げ、結果的に大勢の同行者を苦しめており、こうした彼の考え方は理解されない感じがしました。

また『三国志』(蜀書・法正伝〈ほうせいでん〉)によると、214年に成都が劉備軍に包囲された際、許靖は城壁を乗り越え投降しようとして失敗したという。彼は劉璋にも厚遇され「蜀郡太守」を務めていました。ここでの態度にも問題があるでしょう。

そして劉璋の降伏後、劉備は許靖を起用したくないと考えますが、法正がこう勧めます。

「天下には虚名を博しながらも実質を伴わない者がおり、許靖がこれにあたります。しかし、主公(劉備)は大業を始められたばかりですので、天下の人々ひとりひとりに説いて回るわけにはまいりません」

「許靖の虚名は広く伝わっておりますから、もし彼を礼遇しなければ、天下の人々は主公が賢者を卑しめていると言うでしょう。敬って丁重に扱うことで遠近の人々の目をくらまし、むかし(戦国〈せんごく〉時代)燕王(えんおう)が郭隗(かくかい)を遇したやり方を取られるべきです」

劉備がこの進言に従ったので、許靖は厚遇されることになったのだとか。

ただ本伝には、許靖は70歳を超えても人材を愛し、後進を受け入れて導き、世俗を離れた議論に倦(う)むことがなかったともあるので、やはり人材の登用や育成においては一定の功績があったと言えそうです。

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