法正(ほうせい) ※あざなは孝直(こうちょく)

【姓名】 法正(ほうせい) 【あざな】 孝直(こうちょく)

【原籍】 扶風郡(ふふうぐん)郿県(びけん)

【生没】 176~220年(45歳)

【吉川】 第189話で初登場。
【演義】 第060回で初登場。
【正史】 登場人物。『蜀書(しょくしょ)・法正伝』あり。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

情勢判断に優れた名参謀ながら、暗い一面を併せ持つ、諡号(しごう)は翼侯(よくこう)

父は法衍(ほうえん)だが、母は不詳。法真(ほうしん)は祖父。息子の法邈(ほうばく)は跡継ぎ。

建安(けんあん)年間(196~220年)の初めに天下が飢饉(ききん)に見舞われると、法正は同郡の孟達(もうたつ)とともに蜀へ行き、劉璋(りゅうしょう)に仕えた。

法正は新都県令(しんとけんれい)を務めた後、召されて軍議校尉(ぐんぎこうい)に任ぜられる。しかし重用されなかったうえ、同じ邑(むら)の出身者から品行の悪さを謗(そし)られもしたため、志を得なかった。

それでも益州別駕(えきしゅうべつが)の張松(ちょうしょう)とは仲が良く、劉璋に大事をなす器量がないことを察し、いつもふたりで嘆き合っていた。

208年、曹操(そうそう)が荊州(けいしゅう)へ進出すると、張松は劉璋の使者として遣わされ、曹操との会見を終えて帰国する。

張松は劉璋に復命した際、曹操とは絶交し、劉備(りゅうび)と結ぶよう勧めた。劉璋はこれを容れ、張松が推薦した法正に使いを命ずる。いったん法正は辞退したが、やむなく劉備に会いに行った。

帰国した法正は張松に、劉備が雄略を抱いている様子を聞かせる。ふたりは密談を重ね、劉備を主君として奉戴(ほうたい)したいと願ったものの、なかなか機会がなかった。

211年、曹操が将軍を遣って、漢中(かんちゅう)の張魯(ちょうろ)を討伐しようとしていると聞き、劉璋は恐れを抱く。

そこで張松は、劉備を迎えて、彼に張魯を討伐させるのがよいと進言。再び法正が劉備への使いを命ぜられる。

こうして法正は、劉備に劉璋の意向を伝えた後、益州を取り、この地を基盤に功業を成就するよう献策。また、張松が内応する旨も併せて伝えた。

この年、劉備は軍勢をひきいて益州へ入り、劉璋と涪(ふう)で会見。翌212年には葭萌(かぼう)から反転して攻撃を開始し、214年に劉璋を成都(せいと)で降した。

法正は、蜀郡太守(しょくぐんたいしゅ)・揚武将軍(ようぶしょうぐん)に任ぜられて畿内(きない)の統治にあたる一方、策謀にも参与した。

法正は、以前に受けたわずかな恩讐(おんしゅう)にも必ず報復し、自分を非難した数人を勝手に殺害する。

ある者が諸葛亮(しょかつりょう)に法正の行状を告げ、主君に上言して彼の権限を抑えるべきだと述べた。

だが諸葛亮は、これまで法正の果たしてきた役割の大きさと、主君の信頼が厚いことを考え合わせ、特に働きかけることはなかった。

翌215年、曹操は、張魯を降して漢中を押さえた後、夏侯淵(かこうえん)や張郃(ちょうこう)らを留めて鄴(ぎょう)に帰った。

217年、法正は漢中攻めの好機だと進言し、劉備に容れられる。これを受け、劉備は自ら諸将をひきいて漢中を目指し、法正も従軍した。

219年春、定軍山(ていぐんざん)で黄忠(こうちゅう)が夏侯淵を討ち取る大功を上げたが、その陰には法正の献策があった。

同年秋、劉備が漢中王になると、法正は尚書令(しょうしょれい)・護軍将軍(ごぐんしょうぐん)に任ぜられた。

ところが、翌220年に45歳で死去。劉備は何日も彼の死を悼み、涙を流したという。翼侯と諡(おくりな)され、息子の法邈が跡を継いだ。

管理人「かぶらがわ」より

本伝によると、法正は諸葛亮と性向こそ異なっていたものの、公人として互いに認め合っていたということです。諸葛亮は、法正の知謀を高く評価していたのだとも。

222年に劉備の東征が失敗し、白帝(はくてい)へ逃げ帰った際、諸葛亮が嘆息して言いました。

「法孝直(法正)が生きていれば、よく主上(劉備)を抑えて東征させなかっただろうし、仮に東征していても、きっとこのような危機を避けることができただろう」

陳寿(ちんじゅ)は伝末の評において、龐統(ほうとう)と法正を魏(ぎ)の臣下になぞらえており、「龐統は荀彧(じゅんいく)の兄弟で、法正は程昱(ていいく)や郭嘉(かくか)の輩(ともがら)と言えようか」としていました。

龐統にせよ法正にせよ、替えの利かない才人だったことは確か。ただでさえ劉備陣営は人材難なのに、このふたりも蜀の建国を待たずに亡くなってしまうとは――。

こうなると諸葛亮の超人ぶりや、数十年にわたって国が存在し続けたこと自体、驚かざるを得ませんね。

コメント ※下部にある「コメントを書き込む」ボタンをクリック(タップ)していただくと入力フォームが開きます

タイトルとURLをコピーしました