吉川『三国志』の考察 第008話「三花一瓶(さんかいっぺい)」

張飛(ちょうひ)は楼桑村(ろうそうそん)の劉備(りゅうび)を訪ね、自分の義兄弟の関羽(かんう)にも会ってほしいと頼む。

承諾した劉備が家を出ると、彼方(かなた)から100人ほどの兵士が近づいてくるのが見えた。どうやら張飛が関わっているようだったが、そこへ関羽が武装して現れる。

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第008話の展開とポイント

(01)楼桑村 劉備の家

張飛は楼桑村の劉備を訪ね、その母に拝礼する。

ここで劉備が母に、張飛のことを「翼徳(よくとく)張飛という豪傑」と紹介していたが、この呼び方は気になった。「(名は呼ばず、)張翼徳どのと申される豪傑」などとしたほうがよかったと思う。

ただ、小説ではいちいち劉玄徳(りゅうげんとく。玄徳は劉備のあざな)や張翼徳と書かれるより、劉備や張飛と書かれているほうが読みやすいことも確か。あざなばかりで表記されたら読みにくいだろうし……。

張飛は関羽のことを話し、一緒に彼の住まいまで来てほしいと頼む。母の言葉もあり、この頼みを承諾する劉備。

(02)楼桑村 劉備の家の近く

劉備と張飛が関羽の住まいへ行くため家を出ると、道の彼方から100人ほどの兵士が近づいてくる。これに張飛が関わっているらしいと知り、驚く劉備。

ふたりが兵士に取り囲まれ立ち往生しているところへ、武装した関羽が馬に乗って駆けつける。関羽は兵士らに張飛の力量を語って聞かせ、その捕縛を自分に任せるよう言いくるめてしまう。

こうして捕吏と兵士が引き揚げた後、関羽はここへ駆けつけた経緯を話す。

関羽は張飛から劉備の名が出たところで心を決めており、童学草舎(どうがくそうしゃ。関羽が教えていた村の寺子屋)を閉めたうえ、身ひとつとなってやってきたという。劉備は関羽と礼を交わし、自宅へ誘う。

ここで関羽が河東(かとう)解良(かいりょう)の産だと話していたが、史実では河東(郡の)解(かい。解県)となっている。

(03)楼桑村 劉備の家

劉備は母に関羽を紹介し、その夜は張飛も交えて4人で語り合った。関羽は義挙の盟主に劉備を据える肚(はら)を決めていたが、彼が母親思いであることも知っていたため母の意向を尋ねる。

すると母はすべてを察した様子で、明日は大事な門出でもあるから、一生に一度の馳走(ちそう)をこしらえると告げた。

管理人「かぶらがわ」より

張飛に気のない返事をしていた関羽が、実は劉備を盟主と仰ぐ肚を決めていた。3人が顔を合わせるにあたり、よく練られた展開になっていたと思います。タイトルもきれいにまとまっていました。

前の第7話でも触れましたが、このあたりの味付けは『三国志演義(1)』(井波律子〈いなみ・りつこ〉訳 ちくま文庫)(第1回)には見られないものです。

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『三国志』(全10巻)
吉川英治著 新潮社 新潮文庫
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。

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