吉川『三国志』の考察 第007話「童学草舎(どうがくそうしゃ)」

劉備(りゅうび)の出自を聞いた張飛(ちょうひ)は、すでに閉まっていた涿県(たくけん)の県城の門を乗り越える際、数人の番兵を殺してしまう。

そうしてまでも張飛は、夜中に義兄弟の仲である男の住まいを訪ね、劉備の人となりについて熱っぽく語った。

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第007話の展開とポイント

(01)涿県の城内

劉備と別れた張飛はいったん市の辻(つじ)まで戻り、昼間に広げていた猪(イノコ)の露店を片づける。

それから城外に出る関門へ向かったが、すでに城門は閉められた後だった。門を開けてくれと頼むが、もちろん番兵は相手にしない。

すると張飛は、役人以外が登ることを厳禁している鉄梯子(かなばしご)を使い、数人の番兵を殺して関外へ逃げ去った。

(02)童学草舎(どうがくそうしゃ。関羽〈かんう〉が教えていた村の寺子屋)

夜中、張飛は関羽の住まいを訪ね、かねて話していた劉備と偶然に出会ったことを伝える。

関羽は、劉備が漢室(かんしつ)の宗族たる景帝(けいてい。劉啓〈りゅうけい〉)の裔孫(えいそん)であることがわかったとも聞かされたものの、気のない返事で応じた。

ここで、関羽と張飛が(以前に)義兄弟の約束をしたことが語られていた。

翌朝、張飛は関羽の煮えきらない態度に不満を募らせつつ、童学草舎を後にする。

(03)村の居酒屋

張飛は朝から酒を飲み、その代金を関羽へのツケにした。そうしているうち、関門破りを働いた彼を捜していた捕吏に見つかる。酔っていた張飛は、捕吏がひきいていた10人ほどの兵士の半数を往来で殺害、残った捕吏は逃げ去った。

管理人「かぶらがわ」より

関羽が登場した第7話。夜中の童学草舎でのふたりのやり取りは、それぞれの性格を端的に表すものでした。それにしても張飛は無茶をします……。

『三国志演義(1)』(井波律子〈いなみ・りつこ〉訳 ちくま文庫)では、劉備と張飛が村の居酒屋にいたところへ、(官が募っている)義軍に志願しに来たという関羽が入ってきます。

そして劉備から話を聞いた関羽も大いに喜び、3人そろって張飛の家で旗揚げの相談をした、という展開になっていました。さらに張飛がいささかの田畑を持っているという設定で、有名な桃園も彼の家の裏にあったことに――。

このあたりは意見の分かれるところでしょうけど、私は吉川『三国志』の描き方のほうが好きですね。

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