楊脩(ようしゅう) ※あざなは徳祖(とくそ)

【姓名】 楊脩(ようしゅう) 【あざな】 徳祖(とくそ)

【原籍】 弘農郡(こうのうぐん)華陰県(かいんけん)

【生没】 175~219年(45歳)

【吉川】 第092話で初登場。
【演義】 第023回で初登場。
【正史】 登場人物。

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若者の中では楊徳祖

父は楊彪(ようひゅう)、母は袁氏(えんし。袁術〈えんじゅつ〉の姉妹)。楊囂(ようごう)という息子がいた。

楊脩は謙虚で幅広い才能を持ち、禰衡(でいこう。198年没)が「許都(きょと)にいる若者の中で一番マシだ」と高く評価した逸材だった。

楊脩は、建安(けんあん)年間(196~220年)に孝廉(こうれん)に推挙され郎中(ろうちゅう)に任ぜられたものの、丞相(じょうしょう)の曹操(そうそう)の要請により倉曹属主簿(そうそうぞくしゅぼ)として起用された。

曹操が丞相を務めていた期間は208~220年。

このころ軍や国政に関して事が多かったが、楊脩は内外を取り仕切り、処理した案件はよく曹操の意にかなう。こうした活躍により、曹丕(そうひ)を始め、みな争うように彼と交わりを結んだという。

臨菑侯(りんしこう。214~221年)の曹植(そうしょく)も楊脩に心を寄せたひとりで、たびたび手紙をやり取りした。

楊脩は、丁儀(ていぎ)や丁廙(ていい)らとともに曹植を守り立て、曹操も跡継ぎを決めかねる。

だが曹植は気ままに振る舞い、けじめがなく、そのうち曹操から疎んぜられてしまう。それでも曹植は楊脩らとの付き合いをやめず、楊脩も関係を絶とうとはしなかった。

217年、曹丕が(魏〈ぎ〉の)王太子に立てられる。

219年1月、陽平関(ようへいかん)にあった曹操配下の夏侯淵(かこうえん)が、劉備軍(りゅうびぐん)との戦いで討ち死にする。

同年3月、曹操は軍勢をひきいて長安(ちょうあん)を出ると、斜谷(やこく)を抜け陽平に到着。要害に拠って抵抗する劉備軍と対峙(たいじ)した。

ほどなく曹操は引き揚げたほうがよいと考え、「鶏肋(けいろく)」と布令したが、属官たちにはその意味がわからない。

ところが主簿の楊脩だけは、すぐに帰り支度を始める。

驚いた者が尋ねると、楊脩はこう答えた。

「鶏の肋(あばら)は捨てるに惜しい気がするが、食べても腹の足しにはならない。それを漢中(かんちゅう)に例えられたのだから、王(曹操)がご帰還のお考えだとわかったのだ」

同年5月、曹操は軍勢を引き揚げ、長安に帰還する。

同年秋、楊脩は、以前に何度も曹植に曹操の質問を漏らし、その返答まで用意したことなどをとがめられ、逮捕後に処刑された。彼が袁術の甥(母が袁術の姉妹)にあたっていたことも災いしたという。

そして、楊脩の死から100余日(翌220年1月)で曹操も崩じ、跡を継いだ曹丕が天下を支配することになった。

管理人「かぶらがわ」より

上で挙げた記事は『三国志』(魏書〈ぎしょ〉・陳思王植伝〈ちんしおうしょくでん〉)とその裴松之注(はいしょうしちゅう)に引く魚豢(ぎょかん)の『典略(てんりゃく)』によるもの。

「鶏肋」の逸話は『三国志』(魏書・武帝紀〈ぶていぎ〉)の裴松之注に引く司馬彪(しばひゅう)の『九州春秋(きゅうしゅうしゅんじゅう)』に見えており――。

禰衡から楊脩が評価された件は『三国志』(魏書・荀彧伝〈じゅんいくでん〉)の裴松之注に引く『平原禰衡伝(へいげんでいこうでん)』に見えています。

これほどの知恵者でありながら、楊脩は己の最期を予測できなかったのでしょうか? まぁ、楊脩を惹(ひ)きつけた曹植に強烈な魅力があった、とも言えましょうか。

あと驚いたのは、楊脩の名が『三国志』(蜀書〈しょくしょ〉・先主伝〈せんしゅでん〉)の裴松之注に引く『益部耆旧雑記(えきぶききゅうざっき)』に見えていたこと。

「劉璋(りゅうしょう)配下の張松(ちょうしょう)が――」とくれば、思い出す方も多いはず。吉川『三国志』(第188話)や『三国志演義』(第60回)でも使われていた『孟徳新書(もうとくしんしょ)』のエピソードです。

張松は小柄で勝手気ままな振る舞いが多く、品行を整えようとしなかったものの、高い見識と才腕の持ち主だったそう。その張松が劉璋の使者として曹操のもとへ遣わされた際、あまり礼遇されなかったという。

ところが主簿の楊脩は張松を高く評価し、召し抱えたほうがよいと上言します。曹操は承知しませんでしたが……。

また、楊脩が曹操の著した兵書を見せたところ、張松は宴会の間に通覧し、その場で暗唱したのだとか。

それで楊脩は、ますます張松を特別視したということでした。『孟徳新書』の話には元ネタがあったのですね。

ほかにも楊脩がらみのエピソードは多く、そのほとんどに元ネタがあるようで――。頭の回転の速さには驚かされるばかり。

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