傾国の美女たる貂蟬(ちょうせん)を用い、董卓(とうたく)と呂布(りょふ)との離間を図った王允(おういん)。
彼らを別々の日に招待して貂蟬を引き合わせると、案の定、ふたりともすっかり心を奪われた様子――。
第036話の展開とポイント
(01)長安(ちょうあん) 王允邸
王允は一家を挙げて呂布をもてなすと、給仕の侍女に貂蟬を呼んでくるよう言う。まもなく姿を見せた貂蟬が挨拶すると、呂布は恍惚(こうこつ)と眺めるだけで、すっかり心を奪われてしまった。
★ここで王允は貂蟬を(自分の)娘と紹介していた。
夜も更け呂布が帰ろうと立ちかけたところで、王允は貂蟬を差し上げてもよいとささやく。ただ、近いうちに吉日を選んで室へ送ることを約束するだけにしておき、この夜は呂布を帰らせた。
(02)長安 董卓の閣
翌日、王允は朝廷に出仕。呂布の見えない隙をうかがって董卓の閣へ行き、自邸での酒宴に誘う。董卓は非常な喜色で、明日にも行くことを快諾した。
★『三国志演義(1)』(井波律子〈いなみ・りつこ〉訳 ちくま文庫)(第8回)では、王允が董卓を自邸に招きたいと言ったのは、呂布をもてなした数日後のこと。
(03)長安 王允邸
帰宅した王允はこのことを密かに貂蟬に伝え、家人を督して供応の善美を凝らす。翌日の巳(み)の刻(午前10時ごろ)、予定通りに董卓の車列が到着した。
★井波『三国志演義(1)』(第8回)では、董卓が王允邸に到着したのは正午。
王允は高座に迎えて最大の礼を尽くした。董卓も大満足な様子で、王允が傍らの席に着くことを許す。
やがて座上が杯盤狼籍(はいばんろうぜき。酒宴の席の杯や皿などが乱れた様子)になると、王允は董卓に少憩を勧め後堂に迎える。王允は家蔵の宝樽(ほうそん)を開け、長寿酒を注ぎつつ貂蟬の舞を披露する。
★このとき王允は、貂蟬を当家の楽女(がくじょ)と紹介していた。
董卓が絶賛するのを見て、王允は貂蟬を献ずると告げる。董卓は満足を表す言葉も知らないほど喜び、彼女を丞相府(じょうしょうふ)へ連れ帰った。
丞相府まで同行した王允がわが家に引き返してくると、彼方(かなた)の闇から呂布の一隊が近づいてくる。呂布は王允が貂蟬を献じてしまったことに激怒していた。
王允は呂布をなだめて自邸の密室に招き、言葉巧みに事情を説明。董卓が呂布をからかうつもりで、ひとまず貂蟬を預かったのだと信じ込ませる。
管理人「かぶらがわ」より
着々と進められる王允の連環計。ここまで来れば、もう半分以上は成功でしょうか?
ただ、なぜこの計が離間計ではなく連環計と呼ばれるのか――。心を捉えて離れられないように連環するからなのか? イマイチしっくりこないのですよね……。
テキストについて
『三国志』(全10巻)
吉川英治著 新潮社 新潮文庫
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。
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