【姓名】 曹彰(そうしょう) 【あざな】 子文(しぶん)
【原籍】 沛国(はいこく)譙県(しょうけん)
【生没】 ?~223年(?歳)
【吉川】 第212話で初登場。
【演義】 第068回で初登場。
【正史】 登場人物。『魏書(ぎしょ)・任城威王彰伝(じんじょういおうしょうでん)』あり。
魏(ぎ)の曹操(そうそう)の息子で曹丕(そうひ)の同母弟、任城威王
父は曹操、母は卞氏(べんし。武宣卞皇后〈ぶせんべんこうごう〉)。
同母兄の曹丕のほか、同母弟には曹植(そうしょく)と曹熊(そうゆう)がいる。息子の曹楷(そうかい)は跡継ぎ。
曹彰は若いころから弓馬に優れ、人並み以上の筋力を備えていた。それは自ら猛獣と格闘するほどのもので、険阻な場所も平気だった。たびたび曹操の征伐に付き従い、激しい気性を示したという。
鄢陵侯(えんりょうこう)および鄢陵公を経て、222年には任城王に封ぜられた。
翌223年、洛陽(らくよう)に滞在中に病死。諡(おくりな)は威王。息子の曹楷が跡を継いだ。
主な経歴
生年は不詳。
-216年-
この年、鄢陵侯に封ぜられた。
-218年-
この年、代郡(だいぐん)の烏丸族(うがんぞく)が反乱を起こす。北中郎将(ほくちゅうろうしょう)として驍騎将軍(ぎょうきしょうぐん)を代行し、これを散々に討ち破った。
-219年-
この年、父の曹操が漢中(かんちゅう)から撤退。越騎将軍(えっきしょうぐん)を代行し、長安(ちょうあん)に留まるよう命ぜられた。
-220年-
1月、父の曹操が崩御(ほうぎょ)。2月には同母兄の曹丕が丞相(じょうしょう)・魏王(ぎおう)を継ぐ。
10月、同母兄の曹丕が、漢(かん)の献帝(けんてい)の禅譲を受けて帝位に即く。
この年、5千戸の加増を受け、封邑(ほうゆう)が1万戸になった。
-221年-
この年、鄢陵侯から鄢陵公に爵位が進んだ。
-222年-
3月、任城王に封ぜられる。
-223年-
6月、洛陽滞在中に病死。
管理人「かぶらがわ」より
本伝に出てくる曹操とのやり取りが、曹彰の性格をよく表しています。
あるとき曹操は、曹彰の気性を抑えるために言った。
「お前は書物を読んで聖人の道を慕うことを考えず、汗馬に乗って剣術を好んでいるが、それは匹夫のやることであり、どうして尊ぶほどのことがあろうか」
そして、曹彰に『詩経(しきょう)』と『尚書(しょうしょ)』を読むように勧めた。しかし曹彰は側近に言った。
「男子は、ひたすら(前漢〈ぜんかん〉時代の名将である)衛青(えいせい)や霍去病(かくきょへい)となって10万の騎兵をひきい、砂漠を駆け回って蛮族を追い立て、功を上げ称号を打ち立てるべきだ。どうして博士(はくし)になどなれようか」
またあるとき、曹操が息子たちに好きなことを尋ねた際、曹彰は「将になるのが望みです」と答えたとも。
その曹彰の死は突然でした。本伝では病死したとありますけど、まぁ曹丕はいろいろ言われたんでしょうね……。
曹彰の葬儀は後漢(ごかん)時代の東平憲王(とうへいけんおう。劉蒼〈りゅうそう〉)の例に倣い、盛大に執り行われたそうです。これも何だか引っかかる対応。
曹操の息子たちの中では、「武」の部分を一手に引き受けていた感のある曹彰。もう少し長生きだったら、魏の波乱のタネになっていたかもしれません。
このほか本伝の裴松之注(はいしょうしちゅう)に引かれた記事も興味深く、魚豢(ぎょかん)の『魏略(ぎりゃく)』には――。
「(曹操が崩御した後で洛陽に)到着した曹彰が弟の曹植に、『先王(曹操)が私を召されたのは、お前を(世継ぎに)立てられるおつもりだったのだ』と言ったところ、曹植が『いけません。袁氏(えんし)兄弟を見ておられなかったのですか』と応じた」とあります。
同じく『魏略』は、曹丕が魏王を継いだ後、曹彰が諸侯とともに封国に向かったくだりにも触れており、「当時、鄢陵は痩せ果てた土地だったため、代わりに中牟(ちゅうぼう)を治めさせた。曹丕が漢の禅譲を受けると、そのまま(曹彰を)中牟王に取り立てた」。
「その後、曹丕が許昌(きょしょう)に行幸すると、(ご機嫌伺いにやってくる)北部の州の諸侯は爵位の高下にかかわらず、みな曹彰の剛毅さを恐れ、必ず速度を上げて中牟の地を通過した」とあります。
なお、ここで出てくる中牟がらみの爵位については、『三国志』(魏書・文帝紀〈ぶんていぎ〉)などに記事がないようなのではっきりしませんでした。
さらに孫盛(そんせい)の『魏氏春秋(ぎししゅんじゅう)』には、「そのむかし曹彰は王(魏王)の印綬(いんじゅ。官印と組み紐〈ひも〉)の所在を尋ね、今にも反逆しそうな様子を見せたことがあった」。
「このため(223年に)来朝した際、すぐには曹丕に目通りできなかった。こうしたこともあって、曹彰は憤怒のあまり突然亡くなったのだ」ともありました。
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