吉川『三国志』の考察 第083話 「兇門脱出(きょうもんだっしゅつ)」

先に招待を受けた際の礼を述べるため、劉備(りゅうび)は再び曹操(そうそう)の丞相府(じょうしょうふ)を訪ねる。

曹操は前回と趣向を変えて歓待したが、この場に河北(かほく)の情勢を探らせていた満寵(まんちょう)を呼び入れ報告を聞く。すると、ここで劉備があることを願い出た。

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第083話の展開とポイント

(01)許都(きょと) 劉備(りゅうび)の客館

数日後、劉備は先日の招きの礼を述べるため、丞相府(じょうしょうふ)へ行くと言う。

関羽(かんう)と張飛(ちょうひ)が口をそろえて自重を促すと、初めて劉備は、畑に出て肥桶(こえおけ)を担いだり、雷鳴に耳をふさいで箸(はし)を取り落としたりしてみせた意図を明かす。

これを聞くとふたりとも周到な用意に舌を巻き、供に従って車の後に歩いた。

劉備が畑に出て肥桶を担いだことについては、先の第81話(01)を参照。

また、劉備が雷鳴に耳をふさいで箸を取り落としたことについては、前の第82話(01)を参照。

(02)許都 丞相府

曹操(そうそう)は劉備を見ると今日も至極機嫌がよく、先日の清雅淡味と趣を変え、この日は贅美(ぜいび)濃厚な盞肴(さんこう。酒と料理)をもって卓を満たす。

そこへ、河北(かほく)の情勢を探りに行っていた満寵(まんちょう)が帰ってきたとの知らせが届く。曹操はすぐに通して報告を促す。

満寵が、北平(ほくへい)の公孫瓚(こうそんさん)が袁紹(えんしょう)のため滅ぼされたと伝えると、座にあった劉備が驚く。

曹操は劉備から公孫瓚とのかかわりを聞き、満寵に公孫瓚滅亡の子細を語るよう言う。

満寵は、公孫瓚が冀州(きしゅう)の要地に易京楼(えきけいろう)と名付ける大城郭を築き、一族でそこへ移っていたこと。その後、味方の一部隊を敵の中に捨て殺しにしたことから信望が薄れ、士気もすさびだしたこと。

公孫瓚が黒山(こくざん)の張燕(ちょうえん)に協力を求め、袁紹を挟み撃ちにする策を立てたものの、裏をかかれて惨敗に終わってしまったこと。

袁紹が地の底に日夜坑道を掘り進め、これがとうとう易京楼に達し、内から不意討ちを仕掛けると同時に外からも攻め、一挙に全城を屠(ほふ)ったこと。

公孫瓚は逃げ道もなく、妻子を刺したあと自身も自害して果てたことを話す。

また満寵は、袁術(えんじゅつ)も自製皇帝(こうてい)の位が持ちきれなくなったため、兄の袁紹に伝国の玉璽(ぎょくじ)を贈り、自分は実利をせしめようと合体運動を起こしているとも伝え、報告を結んだ。

ここで劉備は一軍を貸してほしいと願い出、淮南(わいなん)を捨てて河北へ向かう袁術を、徐州(じょしゅう)で食い止める考えを示す。曹操はこれを容れ、翌日にはこの旨を献帝(けんてい)に奏して許しを得た。

献帝は涙を浮かべ、劉備を宮門まで見送る。劉備は将軍(しょうぐん)の印を腰に帯び、朝廷を退出して丞相府に立ち寄った。

そして曹操から5万の精兵とふたりの部将を借り受けるや、取るものも取りあえず許都の客館を引き払い出発した。

(03)許都の郊外

劉備が許都を発ったと聞き、驚いた董承(とうじょう)は十里亭(じゅうりてい)まで馬を飛ばす。

『三国志演義(2)』(井波律子〈いなみ・りつこ〉訳 ちくま文庫)の訳者注によると「(十里亭は)街道に設けられた旅行者用の休憩所。10里ごとに長亭(ちょうてい)を設置し、5里ごとに短亭(たんてい)を設置する」という。

劉備は日ごろの約を忘れたわけではないと言い、かねての大事を曹操に気取られないよう身を慎んでほしいと諭して別れた。

その後は急ぎに急いで昼夜の行軍を続ける。関羽と張飛が怪しんで尋ねると、劉備は「都門を脱して今は魚の大海に入り、鳥の青天へ帰ったような心地がする」と、許都での苦しい日々を心から述懐した。

(04)許都 丞相府

諸軍の巡検から許都に帰ってきた郭嘉(かくか)は、丞相府に出て初めて、劉備の離京と大軍を借り受けていった事実を知る。驚いてすぐ曹操に会うと、口を極めて無謀をなじった。

井波『三国志演義(2)』(第21回)では、ここで曹操を諫めていたのは郭嘉と程昱(ていいく)のふたり。

曹操は彼の言葉を聞き後悔し、虎賁校尉(こほんこうい)の許褚(きょちょ)に命じて劉備を追いかけさせる。許褚は軽騎の猛者500を選って連れていく。

(05)行軍中の劉備

それから4日目、許褚は劉備に追いつき馬上のまま会見する。ところが劉備は曹操の帰還命令に従わないばかりか、許都を発つ前に郭嘉と程昱がしきりと賄賂(わいろ)を求めたが、相手にせず拒んだ、などと言いだす。

井波『三国志演義(2)』(第21回)では、許褚は馬から下り、劉備の陣営に入って会見したとあった。

(06)許都 丞相府

許褚は空しく引き返し、ありのままを復命。曹操は怒って郭嘉を呼びつけ、賄賂の件を厳問する。郭嘉が色をなし、また欺かれたと指摘すると、すぐに悟った曹操も快然と笑い、彼の顔色をなだめた。

管理人「かぶらがわ」より

本性を現し許都からの脱出を果たす劉備。しかも5万の精兵付き(曹操配下のふたりの部将も付いていますけど……)。

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吉川『三国志』 (04) 臣道の巻
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