吉川『三国志』の考察 第132話「雪千丈(ゆきせんじょう)」

降りしきる雪の中、劉備(りゅうび)は何とか諸葛亮(しょかつりょう)の草廬(そうろ)にたどり着く。

しかし前回と同様、今回も諸葛亮は不在で、弟の諸葛均(しょかつきん)に自身の思いをしたためた一書を託して帰るほかなかった。

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第132話の展開とポイント

(01)隆中(りゅうちゅう)

劉備らが隆中に近づいたころ、天地の物はことごとく真っ白になっていた。張飛(ちょうひ)は無意味な苦労だと言い、新野(しんや)へ引き返すよう勧めるが、劉備は叱りつけて相手にしない。

やがて、村の居酒屋からふたりの歌声が聞こえてくるのに気づく。その詩の内容から、どちらかひとりは諸葛亮に違いないと、劉備は居酒屋へ入っていった。

しかし、飲んでいたふたりの処士に声をかけてみたが、どちらも諸葛亮ではない。潁州(えいしゅう)の石広元(せきこうげん。広元は石韜〈せきとう〉のあざな)と汝南(じょなん)の孟公威(もうこうい。公威は孟建〈もうけん〉のあざな)だった。

劉備は、ともに諸葛亮の草廬を訪ねるよう勧めるが、ふたりは巧みに避ける。やむなく劉備はふたりと別れ、居酒屋の外へ出た。

(02)諸葛亮の草廬

ようやく草廬にたどり着き柴門(さいもん)を叩くと、先日の童子が、今日は書堂におられるようだと答える。

劉備は関羽(かんう)と張飛のふたりだけを連れ、園の奥へ通っていく。すると書斎らしい一堂があった。

劉備がひとり階下へ寄り、そっと室内をうかがってみると、眉目秀明な若者が口の内で微吟している。そのうち炉に寄って居眠ると、劉備は試みに「先生。お眠りですか?」と声をかける。

劉備が礼を施すと、若者はあわてて身を正し答礼。彼も諸葛亮ではなく、弟の諸葛均だった。またも諸葛亮は不在で、今朝ほど崔州平(さいしゅうへい)が来て、ふたりでどこかへ出ていったという。

『三国志演義(3)』(井波律子〈いなみ・りつこ〉訳 ちくま文庫)(第37回)では諸葛均が劉備に、(諸葛亮は)昨日、崔州平どのに誘われて遊びに出かけました、と話していた。

吹雪の中、堂外で待っていた張飛は帰還を促すが、劉備は落ち着き込み、諸葛均の出した茶をすすった。さらに紙筆を借り、諸葛亮あての一書をしたためる。

そして書簡を諸葛均に託し、諸葛亮が帰ったら渡してほしいと頼んで帰っていく。

ここで劉備は「漢(かん)の左将軍(さしょうぐん)、宜城亭侯(ぎじょうていこう)、司隷校尉(しれいこうい)、領予州牧(りょうよしゅうぼく。領豫州牧)の劉備」と記していた。ほかの官爵は変わっていなかったが、いつの間にか司隷校尉が増えている。先の第124話(01)を参照。またここでは、文末の日付を「建安(けんあん)12(207)年12月吉日」としていた。

劉備らが門外に出、馬を寄せて去ろうとしたとき、送ってきた童子が「老先生だ!」と彼方(かなた)へ高く呼びかける。劉備は今度こそと思ったが、諸葛亮の岳父(しゅうと)の黄承彦(こうしょうげん)だった。

(03)隆中

劉備は黄承彦と別れて帰途に就いたが、雪も風もやまない。先に立ち寄った居酒屋のある村まで来たときには、すでに日も暮れかけていた。

管理人「かぶらがわ」より

再び隆中を訪ねた劉備でしたが、またも空振りに終わりました。ただ、今回は弟の諸葛均や岳父の黄承彦という、諸葛亮の身内には会えています。

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『三国志』(全10巻)
吉川英治著 新潮社 新潮文庫
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記事作成にあたり参考にさせていただいた各種文献の詳細は三国志の世界を理解するために役立った本(参考文献リスト)をご覧ください。

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